☆16. ドッペルゲンガー

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「お坊ちゃまは小さい頃から美意識が高くて、聡明なお子さんでした」確かこちらの定さんがスキンケアをしてくれたという話。「七條様の本家のお子さんで美貌も頭脳も兼ねそろえたまさにサラブレッドという言葉がぴったりなお子さんでした。……幼い頃の、大人の本心を見透かすような、あの強い眼差しがいまも思い出されます」  Kも、特徴的なのは瞳だ。すっ、と目元が切れ長なのに対して瞳がまんまるい。  愛くるしい、愛玩動物のような愛らしさで。 「七條明氏は、隠し子なんて作らずどんどん認知した。……いま、本家にいらっしゃるのも、いわゆる非摘出子、だったんですよね。確か明一郎さんと仰る」 「ええ。ええ。旦那様は本当に……情に厚いお方で」ひとは、そのひとが亡くなった後に、本当のそのひとの価値が分かるのかもしれない。涙を浮かべる定さんは、明らかに、七條明氏を慕っている。「お子さまが十人も二十人もいるような状況で……でも、どのお子さんも大事に大事に育てていらっしゃったのです。勿論、旦那様はお仕事に精を出されていましたから、子育ては女性たちの仕事でございましたが。離れが何軒もありまして、そちらに、そうですね、月に一度は必ず顔を出すようにしておられました」
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