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生温かく濡れた舌が入り込みあたしの官能を暴いていく。もっと、もっと……。こんなところで、という理性はすこしは働いてはいるものの、アバンチュールを楽しみたいという野蛮な自分も存在する。
彼は、あたしの正体を見逃さない。
逃げる舌を追いかけて絡ませ、絡めとり、舌の裏に舌を滑り込ませ、つんつんと、刺激する。
舌をあまがみされたときに、本気で腰が抜けた。ずるりと彼の舌が抜け、彼に背中を支えられる。
「……本気で腰抜かすって、マジ?」
「……よすぎるんだもん」涙目になってあたしは強がった。「あんなキスされたら、女は死ぬ」
「殺してやろうか」
ぞっとするほどに美しい顔で彼は告げる。
「おまえのことを、キスだけで殺してやる」
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