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舞台は公園のベンチへと移して。隣に座る彼に手を握られ、また、あの、腰砕けのキスをかまされている。
こんなになるなんて。もう、……好き。
胸の奥が切なくなるのはどうして。耳を撫でられ、顔を持ち上げられ、彼が触れる皮膚のすべてにあまやかな電流が走り、あたしを脳なしにさせるの。
もう、……無理。
我慢、……出来ない。
このひとが誰だっていい。もう、こんな……全部ぐっちょぐちょになって。隠し持つ性欲を暴き出されてこんなの、もう、我慢出来ない……。
執拗なキスの合間にあたしは訴えた。「お願い。……もう、無理……」
はぁ、と胸が上下するくらいに息を吐く。涙が勝手に溢れ、離れた彼のすさまじいほどの余韻。舌も唇も、何度も触れられた頬や耳や首筋。彼の繊細な手のひらの感触が離れない。
あたしのあふれ出る涙をぬぐって彼はすこし笑った。
「感じやすい花が、おれは大好きよ」そしてまたあたしの頬を、その大きな手のひらで包み込み、
「この先がもっと……知りたい?」
こくり、とあたしは頷いていた。迷いなど、微塵もなかった。
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