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☆15. 真相
「そうなんですね。……そんな経緯が……」
七條くんを、苦労知らずのお坊ちゃんだと思っていた自分が恥ずかしくなった。彼は、彼の世界でちゃんと戦っている。
「どこに行っても七條さんの名前を出されるのは、……しんどいですよね」
「でも、神崎課長は、本当のぼくのことを見てくれていた。
……面接なんて、企業が応募者を選別する場でしかないのに」
七條くんは、敬意の入り混じった視線を神崎課長に向け、
「それに。人事部で人事業務を担当しているのならともかく。現場であれだけのタフなスケジュールをこなす課長殿が、わざわざ……一介の応募者に過ぎないぼくなんかのために、あんなに真剣になってくれて。適当にこなせばいいのに。あんな……本気になって……」
おそらく、剣と剣を交わした剣士のような本気のぶつかり合いがあったのだろう。
神崎課長に向ける目に、なにか、ある感情が混ざっているような……。
「馬鹿なんですよ。……ひとつひとつのことを、あんな、無邪気な子どもみたいに一生懸命になって。自分は泥をかぶって、部下には絶対怒らないし、あんな……プライベート犠牲にしてまで仕事に心血を注いで。
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