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せめて、写真の一枚だけでも撮っておけばよかったのに。つくづく悔やまれる。
あんなにも狂おしく愛してくれたあなたの正体を知らない、自分のことがもどかしくて仕方がない。
「待っていればまた……会えるの?」あなたに貪られた唇に手が伸びる。「また会える、って言ってくれたよね……あたし、信じているのよ。
あたしをこんなにしたあなたが、あたしを放っておくはずがないって」
*
何気なく商店街を通っていてびっくりした。
ガラス張りの美容室で、髪をカットされているK、あなたがいたのだから。
*
「ごめんねー。なかなか会えなくって」
「もう、……二度と会えないかと思っていたよ」
「ごめん」と公園で、ベンチに座るあたしの前に跪いたあなたは、ペットボトルの蓋を開くとあたしに差し出し、「……暑いから、飲みな?」
「あなたは、どこであたしのことを見ているの?」
「こんなに暑いと熱中症になっちゃうよ。……話は手短にしよう」
「会社の中。それとも、出入りする業者? ……ねえ、K。あなたは、どこであたしを見つけたの?」
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