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「……すっごいイケメンだって聞いてたけど、ほんとすっごいイケメンね」 「聞いてたって……」   誰に?!  母がじっと僕を見る。  なんか色々バレそうでコワい。 「そりゃね、駅前でお茶してたらお母さんの耳に入ってくるわよ? それに日曜も下まで送ってもらってるでしょ?」 「あ……」  玄関ドアを開けて入っていく母の後に付いていく。 「ママ友に聞いたの。秋川くんって第二中だったんでしょ? 家そんなに近くないのに、ここまで送ってくれるなんて優しいのねぇ」 「……うん」  ふふって笑った母が「さ、ご飯ご飯ー」と歌うように言いながらキッチンに向かっていった。僕は洗面所で手と火照った顔を洗った。  お母さん、どう思ってるんだろう  ママ友の情報網ってどれぐらいのものなの? 「琳ー、早く着替えてらっしゃーい」 「あ、は、はーいっ」  ほんとのこと知ってたら、こんなに普通にしてないと思う。  ……やっぱその時は怒るのかな……  でも、怒られてもダメって言われても、僕は先輩が大好きだけど。 「お母さん、あの……、今週の土日、出かけるから」  母と2人で晩ご飯を食べながら平静を装ってそう言った。父はまだ帰って来ていない。 「あら、そうなの。あ、内野くんの試合とか?」  母が小鉢のオクラを摘みながら言う。 「じゃなくて……」 「あ、バスケね」  事もなげに言われて言葉に詰まった。 「どしたの、琳。流れ的にそうでしょ?」 「まぁ、うん、そう…です」  わかめのお味噌汁を飲みながらボソボソと応えた。 「でもほんと、カッコよかったわー、秋川くん。内野くんもイケメンだけど秋川くんの方が歳が上な分、包容力があるって感じね。頼りになるお兄さんって感じ」  母がにこにこしながら言う。僕は、うんと頷いて応えた。  ほんとはね、ちょっと違うんだ、お母さん 「すごい人と知り合ったわね、琳」 「……うん」  あのね、お母さん  秋川先輩はね、ただの先輩じゃなくて僕の恋人なんだよ  お兄さんじゃなくて彼氏なんだ  言えないけど、ちょっと言いたい。  あの格好いい秋川先輩は、丸ごと全部僕のものなんだよって
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