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 その次の試合は、祈るような気持ちで見ていた。  永遠に観られるわけじゃないんだ。  おしまいへのカウントダウンはもう始まってる。  1秒も無駄にはできない。  2試合目も勝ったところでお昼休憩になった。岡林先輩たちと大急ぎで駅から反対方向にあるコンビニに走った。思った通りうちの生徒しかいなくて、まだそんなに混んでいなかった。 「お昼って一緒に食べられるんですか?」  眞美ちゃんが岡林先輩に訊いてる。 「うん、たぶん。ね、朋美」 「うん、だいじょぶ。向こうは先に食べ始めてると思うけど」    暑いねーって言いながら体育館に戻ると、坂井先輩が「朋美ー」と手を上げた。  あ、秋川先輩っ  えへへって思いながら先輩の隣に座ったところで、斉藤と目が合ってしまった。  斉藤は玉子焼きを箸で摘んだまま一瞬固まって、それからまたお弁当に目を落とした。 「そっか、斉藤は1ー4だったね」  秋川先輩が僕の視線の先を見て言った。  あれ? 「先輩、待っててくれたんですか?」  秋川先輩、お弁当開けてない。 「ん? ああ、うん。ていうか、さっきまで走ってていきなりは食べられないからね」  そんなことないんじゃないかなぁって思ったけど、先輩がそう言うならそうなのかな?  一緒に食べるの、うれしい 「保科くんと食べると、弁当以外のエネルギーもチャージできるんだよね」  秋川先輩がボソッとそんなことを言った。 「……じゃあ」  ちょっと図々しいかな?  ん?って顔をした秋川先輩をじっと見る。  だいじょぶかな?  ドキドキ ドキドキ 「次も、勝ってくださいね?」  先輩が驚いたように目を見開いて僕を見た。そして、  わ、わ、わ、わ、  スッと細められた形のいい目から、キラキラの光の粉が振りまかれたように見えた。その輝きに包まれる感じがする。 「もちろんだよ。全力で戦う。まだ先輩たちとプレイしたいしね」  低く、柔らかい声の中に強さを感じた。 「保科くん、今日も送って行きたいから帰り待ってて、ね?」  にこっと笑う先輩に、うんと頷いて応えた。 「あ、琳ちゃん、あたし用事があるから終わったらすぐ帰るから」  岡林先輩の隣に座っている眞美ちゃんが僕の方をくるっと向いて言った。  ほんとかな?って思ったけど、うんて応えた。
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