Rin     15

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Rin     15

「明日のホームマッチね、秋川先輩バスケに出るんだって!」 「えー! ほんと?! 絶対見に行くー!!」 「行く行くー!!」  休み時間の教室で、女の子たちが集まってきゃあきゃあ言ってる。  いいなー、僕も見に行きたい!  っていうか女の子の情報網はほんとすごい。いっつも感心する。  ホームマッチは親睦を深めるため、とかいうことで全校生徒で丸一日かけて行われる。バスケの他にドッジボールとミニソフトと大縄跳びがあって、僕はドッジボールにした。雨が降ったら、ミニソフトがババ抜き大会に、大縄跳びはオセロ大会になることになってる。  バスケ部員はバスケに出ちゃダメっていうルールがなかったから、秋川先輩がバスケに出るかもって思った。だとしたら、同じ体育館でやるドッジボールにしとけば見られるんじゃないか、っていうヨコシマな理由でドッジに決めた。  とはいえ時間帯が合わなかったらダメなんだけど。  でも秋川先輩を見るために体育館に行く、っていうのができるかどうか分かんないから。だって絶対女の子でいっぱいになるもん、体育館。  そこに入って行けるかっていうと、やっぱちょっとだいぶ気後れする。 「はい、じゃあ今日のホームマッチのトーナメント表配ります。各自自分の出るゲームを確認して、他チームの応援に行ってください」  そう言って、先生が一番前の席にテキトーにプリントを配っていく。  すごい気は急いてるけど、普通の顔をしてプリントを受け取って後ろに回し、ドッジの『1−4』より先にバスケの『2−1』を探す。  秋川先輩は2年1組。  あった!!  2番目のゲームだ。3−2と当たってる。  あ、でも……それよりちょっと早い時間から1−4はミニソフトのゲームが始まっちゃう。  やっぱ自分のクラスの応援しなきゃダメ?  僕のドッジボールは2−1のバスケのゲームのちょっと後になるっぽい。  うわー、見れないかも 「保科、いつまでプリント見てんの」 「わっ」  ぽん、と肩に手をのせられてビクッとした。 「うちの教室で女子が着替えるから3組行くぞ。追い出される前に」 「あ、う、うんっっ」  慌ててジャージの入ってるナップサックを掴んで立ち上がって、内野の後を追いかける。 「あ、ねぇ琳ちゃん内野くん! 廊下で待ち合わせ、ね? 一緒行こ」 「うん! 眞美ちゃん」  眞美ちゃんは僕と同じドッジボールだ。  眞美ちゃん、「秋川先輩見に行こ」って言ってくれないかな。  人任せは良くないって思う。けど、でも。  これぐらい許してほしい。
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