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R 17
でも、僕らのチームは残念ながら負けてしまった。
僕は背中にボールを当てられて、眞美ちゃんはボールを取り落としてアウトになった。
相手が2年生だったし、まあしょうがないかなって思ってたら、そのすぐ後にバスケのゲームが始まった内野たちは、前半2年生と同点で競り合ってた。コートチェンジして後半、まだ点が入らない。相手の2年生のぬるいパスを内野がカットした。
「うわっ、あっ」
「あ!入っったぁーーっ! すごいじゃん内野くん!」
内野が1人でドリブルで切り込んでレイアップシュートを決めた。
2点差!
「すごーい! カッコいー……」って女の子の声が聞こえた。僕も友達としてちょっと鼻が高い。
ピピーッてホイッスルが鳴ってゲームが終わった。
「やばい。2年生に勝っちゃったよ」
眞美ちゃんと手を取り合ってこそこそ笑い合った。
「内野がバスケもあんな上手いとは知らなかったなあ、コラ」
「松岡先輩、イタイっす」
内野が2年生に肩をがっしり組まれて睨まれてる。まあ相手は笑ってるけど。先輩、って言ってるから、サッカー部の先輩なんだろうな。
その先輩が内野の頭をわしゃわしゃと撫でて「次も勝てよ」って笑いながら内野の背中をパンッて叩いた。
「あれ? 今負けちゃってるのドッジだけ?」
「え、うそ。あ、そっか、ソフトもバスケも勝ったもんね」
「大縄は? どうなってんの?」
「見に行こ、見に行こ」
ちょっと前にゲームが終わって、バスケを応援してたドッジボールのチームと、さっき勝ったバスケチームのみんなで、ワイワイ言いながら昇降口へ向かう。
「あ! 秋川先輩!」
え?!
女の子たちが「きゃあ」って言って見つめた先、廊下の向こうから秋川先輩が歩いて来ていた。
あ!
目、合っちゃった……っ
うわっ、笑ったっっ
周りの女の子たちが息を飲んだ。
「みんなで外の応援に行くのかな?」
「あ、はっはいっっ」
前の方を歩いてた男子が、秋川先輩に声をかけられてちょっと上擦った声で応えた。女の子たちはこくこく頷いてる。
秋川先輩は、今僕たちが出て来た体育館へ向かっているんだと思う。
すれ違う、とか近過ぎてドキドキする。
あと数歩で秋川先輩が真横を通る
ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「外、結構暑いから気を付けてね、保科くん」
え?!
思わず秋川先輩を見上げた。立ち止まった先輩は微笑んで僕を見下ろしていた。
なんで?!
「ね?」って感じで僕を見た秋川先輩が、また体育館の方へ歩き始めた。
う、わわわわわわっっっ
ドドドドッと胸が強く打って体温がぶわっと上がってきちゃう。
やばい! 顔熱いっっ!!
咄嗟に下を向いて、鼻を擦るふりで顔を隠した。
「良いなー、琳ちゃん。秋川先輩に声かけてもらっちゃってー、あ」
眞美ちゃんがちょっと覗き込んできながら僕の腕に腕を絡めて、そして外をちらっと見た。
「あー、ほんと、外日差し強いねー。琳ちゃん日焼け止め塗ってないでしょ。ちょっとおいで、塗ってあげる。真っ赤になっちゃうから、琳ちゃん。みんな先行っててー」
そしてそんなことを言いながら、眞美ちゃんは僕の腕をぐいぐい引っ張って、昇降口を通り過ぎた所にある手洗い場まで連れてきた。背後から「オッケー」って声が聞こえてた。
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