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R 19
「今日って昼休みテキトーにとっていいんだよな」
「そうそう。学食も11時半から開いてる」
「じゃ、購買も?」
「開いてる開いてる」
大縄跳びに出ていたクラスメイトも混ざって、みんなでワイワイ言いながら校舎の方へ歩いて行く。
なんかホームマッチって空き時間が多いし、ムダな気がしてたけどそのムダっぽい時間が大事ってことなのかな。
普段一緒にご飯食べたりしないクラスメイトたちと集まって、みんなで喋りながらお昼を食べて、そのまんまの流れでミニソフトの2回戦目を見に行った。
「私、ミニソフトのルール分かんないんだけど」
「野球と似たようなもんだよ」
「野球も分かんない」
「まじでー? よし、おれが教えてやる」
そんなやり取りが近くで聞こえていて、なんかほっこりする。
でもほっこりしながらも僕は今、そわそわしている。
このミニソフトの試合の終わる予定の時間と、秋川先輩の第2試合開始の時間、おんなじなんだもん。
ミニソフトは時間の都合で5イニング制、もしくは30分で終了。
今4回裏で3−7の攻撃。得点は両クラスとも1点の同点だ。
「あ、あの先輩さっきホームラン打った人だね」
「1点入った時のね」
「今回も打っちゃう?」
「さっきは誰も塁に出てなかったけど、今2人出てるからやばいよ」
「3点入っちゃう」
「あれ? そしたら5回表でうちが3点入れなかったら、そこでおしまい?」
「おしまいでしょ。5回裏は無し」
え、それがいい
ごめんなさい、クラスの皆さん。僕は裏切り者です。
でも早く終わって秋川先輩を見に行きたい!!
ぜひ! ぜひ打ってください! そのボール!!
両手を胸の前でがっしり組んでお祈りする。他にもおんなじお祈りポーズしてる人いるけど、祈ってる内容はたぶん正反対だ。
ピッチャーの投げた球はまっすぐにキャッチャーに向かった。
パン!という音がして、ボールが高く飛んでいった。
やったっ!
「う、わーー、またホームランだーーっ!」
「まじかーーっっ!」
頭を抱えてるクラスメイトの後ろ姿を見ながら、僕は組んだ両手を口の所まで上げて、ニヤニヤしそうな顔を隠してる。
走者が戻って1点、また1点と入っていき、3点が追加されて4回が終了した。
「おーっし、まだまだ! 取り返すぞー!」
ミニソフトのリーダーってことになってるクラスメイトが、声を上げてみんなを盛り上げようとしてる。
応援しなきゃいけない。それは解ってる。
でも早く終わってほしい。バスケとドッジは1試合10分しかない。
時間の都合で、3分のゲームをコートを入れ替えて2回行う。
たった10分だから、ミニソフトが終わってから体育館に行ってたら間に合わない。
1試合目も見られなかったし、次があるかは分かんない。
だから見たい! 見たい! 見に行きたい!!
お願い!!
「うーわっっ」
パーン!と何かが破裂したみたいな音と共に、青い空に白いボールが高く、遠く飛んだ。
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