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 口をついて出た言葉に、内野と眞美ちゃんと芽依ちゃんが一斉に僕を見た。  ドドドッと心臓が鳴って、手のひらにじわりと汗が滲む。 「あ……、えっと、さっき早めに体育館来た時見てて、すっごい強かったから、2−1」  ボソボソと言い訳のように言って、視線を足元に落とした。 「そっかぁ。見てた琳ちゃんがそう言うならそうかもね」  眞美ちゃんが、にーっと笑いながら言う。 「あ、わたしはー、1−4が勝ってほしい、な……」  芽依ちゃんが上目遣いで内野をちらりと見ながら言った。  あー……、芽依ちゃんって……  次のゲームまで1時間くらいあるし、いい感じのところはたいてい上級生が集まってるから、とりあえずみんなで教室に戻った。  ほんとは体育館の近くにいたかった。  教室の中にいたら、秋川先輩とすれ違うこともできない。  内心イライラしながら、でも顔には出さないように気を付けて、クラスメイトたちと取り留めのない話をしている。 「ねーねー、次勝ったらさ、2−1と当たるんだし見に行かない? 次の2−1のゲーム」 「そーだよね。見といた方がいいよね」 「つーか、女子はあの先輩見たいだけだろー?」 「やだー、なんでバレたのー?」 「そりゃバレるだろ。でもま、見といた方がいいし行こうぜー」  ってなって、やったーって思ったんだけど。 「いや、これは無理だわ。満員御礼じゃん」  体育館の入口から人がはみ出してる。髪型とかジャージの着こなしで、それが2、3年生の女子だって分かった。1年はとてもとても入れない。  やっぱ対戦相手になんなきゃ入れない、か。  なっても入れるか怪しいけど。  人垣の上の方にボールだけが見えてる。  時々、うわっと盛り上がってて、ドリブルの音や走る足音とキャーキャーと体育館が揺れるような歓声が聞こえていた。  見たい! 見たい! 見たい!! 「背伸びしても全然見えないねー、琳ちゃん」 「!」  眞美ちゃんが隣で「うーん」と伸び上がりながら言った。    ピピーッてホイッスルの音が聞こえて、また体育館の入口から歓声が飛び出してきた。  どっちどっち?!  必死で耳をすませる。 「20対12で2−1の勝ちです!」  ジャッジの声がどうにか聞こえた。  勝った! 秋川先輩! 「やったね!!」  って眞美ちゃんが僕の方を向いて両手を上げたから、 「うん!」  って言ってハイタッチをした。……けど、 「お前ら喜びすぎじゃね?」  内野に苦い顔で睨まれた。  ……しまった…… 「だって嬉しいし。てゆっかほら、琳ちゃんの言った通りになったじゃない。次勝ってよ、内野くん。絶対よ」  人差し指をビシッと立てた眞美ちゃんが、内野を見上げて言った。 「そりゃ負けるつもりはねーけど……」  内野が唇を歪めてそう言った時、体育館の方から一際大きなざわめきが起こった。  秋川先輩たち出てきたっっ 「ごめん秋川くん。ちょっと人数すごすぎて手に負えないから、一回体育館から離れて。できたら外出て」  生徒会長が秋川先輩を見上げて言ってる。会長の声はよく通るからザワザワしてても聞き取れた。 「外、はちょっとヒドくないですか?」  眉を歪めて秋川先輩が苦笑した。  カッコい…… 「だってしょうがないじゃない。なにこの人数。ていうか本気でやんないで、バスケ部のエース級が」 「め!」って感じで叱るみたいに会長が言っててちょっと可笑しい。  秋川先輩は首をすくめて、ちょっと頭を下げて周囲に視線を巡らせた。  あ
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