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Takayuki 32
普段はほとんど会えない保科くんを1日に何度も見られる。
そんなに目がいい方じゃないのに不思議と保科くんは見つけられた。
シルエットが可愛い。小さい頭に細い身体。
見られる時に見とかないと勿体ない。
声だってかけられそうならかけないと、いつになっても親しくなれない。
将大が側にいて、めちゃくちゃ恥ずかしいけど必死の思いで保科くんに話しかけた。
俺が声をかけたら、保科くんは目をまん丸にして見上げてきて、頬がほんのり色付いてすごく可愛らしかった。
その横で、ウチノくんが俺を睨んでた。
松岡のとこの後輩のウチノくんは、やっぱり保科くんのことが好きなんだろうと思う。
そして、俺の気持ちに気付いてる。
最初は隣を歩いてるだけだったのに、次に会った時にはウチノくんは保科くんの肩をしっかりと抱いていた。
ムカつく
オレのだ、とでも言いたいのかよ
ついウチノくんを睨んだ時、保科くんと目が合ってしまった。
あ、やば……っ
なんか怯えたみたいな顔、させてしまった。
そうだよな。先輩に睨まれたら嫌だよな。
ごめん保科くん ごめん ごめん……っ
ぐっと唇を噛みながら体育館に入った。
入口からコートを見て奥側にうちのクラスの面々が集まっていた。
「おーっし、ここまできたら優勝すんぞ!」
将大がニヤッと笑ってクラスメイトを見回しながら言った。周りが「いえーい!」と盛り上がって、「よっしゃ!」って気合を入れてコートに入った。
そのコートに、ウチノくんが入ってくる。
さっきまで保科くんの肩を抱いて、顔を覗き込みながら喋っていた。
一度スーッと血が冷えて、それからこめかみがドクドクいい始める。
やや低い位置から、じろりと見上げてくるウチノくんの視線を受け止めて見下ろした。
「はい両チーム並んでくださーい」
という声かけで、お互いに視線を外して整列した。
斉藤がちょっとビビッた目で俺と将大を見上げてきてる。
ウチノくんはまた強い目で真っ直ぐに俺を見つめてきていた。
もちろん、手加減なんかしてやらない。優勝決定戦だし、ハンデだってある。気を抜いて保科くんの前で負けたくなんかない。
……保科くんのクラスを負かすのもどうなんだって話だけど。
まあそこは仕方ない、か。
ウチノくんの動きはなかなか良かった。本格的にバスケをやったら、斉藤より上手くなるかもしれないなと思った。
そんなことや、バスケ部員のハンデを忘れないようにと考えながらも、つい保科くんを見てしまう。
可愛い
保科くんの隣にはいつもの女の子。保科くんのジャージの袖を掴んでる。
友達だなって将大は言ってた。
保科くんは彼女に袖を引っ張られても、真っ直ぐにコートを見ている。
あの仔猫みたいに可愛らしい丸い大きな目で。
だから見るたび、視線が絡む。
……って、ん?
いや…でも、合いすぎ、じゃないか?
俺は保科くんを見てるけど、保科くんは1−4を応援してるんじゃないのか?
なんで見るたびに目が合うんだ? それじゃまるで……
ピピーッとホイッスルが鳴って前半が終わった。
足を止めながら、もう一度保科くんの方に目を向けると、保科くんが目を逸らした。
その保科くんたちの方へ向かって歩いて行くウチノくんの後ろ姿。
そして当然のように保科くんに話しかけている。
友達なんだから、当たり前なんだけど。
ていうかこんなことでイライラしてる俺、ちっさ……
ウチノくんが「行くぞ!」ってみんなに声をかけながらコートに入ってきて、また俺を睨んだ。
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