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R 37
「このアプリ入れてる?」
一番メジャーなメッセージアプリのアイコンを親指で示しながら、秋川先輩が言う。壁紙、星空。
「あ、はい……っ」
僕も急いでパスコードを入力するけど、慌てすぎて2回失敗してしまった。はずかし……っ
「ん? 猫飼ってるの? 保科くん」
僕の手元を見た秋川先輩が言った。
僕のスマホの壁紙は猫の写真だ。でも。
「いえ、地域猫なんです」
「へー、そうなんだ。猫好き?」
って僕に訊きながら、秋川先輩の親指がスマホの画面を滑る。
「はい」
手が大きいからスマホが小さく見える。
「うちね、猫飼ってるよ。白いのと黒いの」
「え?!」
ほら、って見せてくれたスマホに、白猫と黒猫が寄り添ってる画像。
「わー、かわいー」
次は白猫が黒猫に猫パンチしてるとこ。それからキャットタワーから見下ろしてくる2匹。
「白いのがミルクで黒いのがココア。小6の時、家に帰ってリビングのドア開けたら目の前を2匹が走り抜けて、すごいびっくりしたよ」
「え、飼うって知らなかったんですか?」
「母の友達んとこに仔猫が生まれたって話は聞いてたけどね。まさか飼うとは思ってなかった。しかも2匹いっぺんに」
笑いながら喋る秋川先輩の声が、表情が優しくて、もっともっと一緒にいたくなる。
「あ」
秋川先輩のスマホの画面にメッセージが届いた。
ーーまだかー?
「やべ、藤堂先輩だ」
先輩の指がササッと動いてメッセージアプリに移動する。
あ、ちょっと焦ってる。
軽く唇を噛んで、眉根を寄せてる顔も格好いい。
「ごめんね、保科くん。これ読み取ってもらっていい?」
差し出されたスマホの画面のQRコードを読み取る。
秋川先輩とオトモダチ……っっっ
信じらんない……
「よしOK。手伝ってほしいこととかあったら連絡させてもらうね。あ、でも無理なら断ってくれて全然いいから」
ね、って笑いかけられて胸の中がキュンとなった。
好きです。秋川先輩。
「はい」
断んない、絶対。
先に入ってた予定蹴っ飛ばしてでも先輩の方に行く。
「じゃ、行こっか。ごめんね、ちょっとスピードアップ」
また背中に軽く手を添えられて、学校への道を歩き始めた。
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