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 またブルッとスマホが震えて、パッと画面がついた。    あ…きかわ先輩っっ!  大慌てでアプリを開いた。慌てすぎてさっきのポップアップ『保科くん』までしか読めなかったし、パスコードだってちゃんと押せなくて1回ハジかれた。  息まで苦しい。  ーー保科くん、時間があったら手伝ってほしいんだけどどうかな?  や……ったっっっ!  ーーー大丈夫です どこ行けばいいですか  あ、しまった! ハテナ付け忘れたっっ  ーーありがとう 昇降口の辺りにいてもらえる?  わ、わ、わ  ーーーわかりました  あ、ひらがな……っ  慌てすぎ慌てすぎ!  解ってるけど、速いリズムを刻んでる心臓に合わせて他も全部バタバタしてしまう。  カバンは置いてく? 持ってく? いいや、持ってくっ  走る寸前くらいのスピードで廊下を歩いて、階段を飛び降りたい気持ちで駆け降りて昇降口を目指した。  秋川先輩まだ来てないっ 来てないよね?!  あんな目立つ人を見つけられないわけないし。そういえば生徒会室ってどこだっけ? 先輩どこから来るのかなぁ?  壁にもたれかかって呼吸を整えながら、昇降口に続く廊下を見た。  胸のドキドキは全然収まらない。むしろどんどん強くなっていく。  もうすぐ秋川先輩に会える……っ  あ……っ!  来た……っっ! 来た来たっ秋川先輩……っ!  てゆっか秋川先輩が僕に向けて歩いてきてるっっ  って、あ、そうだ! 先輩には会釈っっ 「ごめんね、待たせたね」  うわぁ…… 「あ、いえ、ぜ、ぜんぜんっっ」  秋川先輩だぁ……  やっぱ格好いいなぁ……  秋川先輩と2人でポスター貼りなんて、夢でも見てるみたいだ。  背が高いから掲示板の一番上まで余裕で手が届いてるし、僕がどんなに引っ張っても取れなかった画鋲、秋川先輩は簡単に引っこ抜いた。  秋川先輩に「保科くん」って呼ばれてドキッとして、そしてドキドキしながら「秋川先輩」って話しかけた。  秋川先輩、ずっとちょっとニコッとした感じだから話しかけやすい。  1階をぐるっと回って、2階に向けて階段を昇った。 「南校舎の2階は後回しにするから」 「あ、はい」  南校舎の2階は、確か職員室とかだよね?  なんでかな、って思いながら秋川先輩の後ろを歩いた。  3年生のフロアに入るのはちょっと怖かった。別に3年生に何かされたことがあるわけじゃないんだけど。  横を歩いていた秋川先輩が、スッと屈んで僕を見た。 「もうあんまり教室に残ってる先輩いなさそうだし大丈夫だよ」  あ、ビビってるのバレちゃった。 「俺もいるから、ね?」  わ……  そんなセリフ、なんで僕に言ってくれるの?  そんな綺麗な笑顔で  勘違いしそう……、でも  せっかくだから、もうちょっと秋川先輩に近付きたい。  避けられちゃう? あ、大丈夫っぽい  わーい!  
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