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「てゆっか何繋がりなの?秋川くん。生徒会に1年生のお手伝いメンバーなんていなかったよね?」  声に、ほんの少しのトゲを感じた。つい、手が止まる。 「ん? あー…俺が個人的にお願いしてるんだ。ちゃんと会長の許可はもらってるよ?」  秋川先輩はやや早口で応えて、バサッとポスターを広げた。今度のはちょっと丸まり気味だったから、下に向けて伸ばすのを手伝った。秋川先輩が手早く画鋲を刺していく。 「わー、なんかいいねー。私も手伝いたーい」 「そんなくっついたらドキドキしちゃうんじゃない?」  女の子たちがそんなことを言っているのを聞きながら、僕も急いで作業をした。 「よし、ここはこれで終わり。次行こう」  わっ!  くいっと一瞬腕を引かれて慌てて足元のカバンを取った。やや早足の秋川先輩に小走りで付いていく。  背後からは、きゃあきゃあワイワイと女の子たちが付いてきてる。  1フロアに掲示板は2ヶ所。  秋川先輩のため息が聞こえた。  ……もしかして、僕一緒に来ない方がよかった?  秋川先輩、こうなるって思ってて僕に「どっかで待ってる?」って訊いたの? なのに僕が付いてきたから、だから……ため息……?  どうしよう……  ドクン ドクン ドクン ドクン  心臓は強く鳴ってるのに、手足が冷えてくる。  迷惑……かけた……。秋川先輩に……。  次の掲示板に着いた。秋川先輩が期限切れのポスターを剥がしていく。僕も唇を噛んで目の前のA4のチラシを剥がした。  ゆっくり、ゆっくり呼吸をしないと、涙が滲んできてしまう。  迷惑かけといて、その上泣くとか最悪だと思う。  呼ぶんじゃなかった、って、失敗した、って思われる。  もう声かけてもらえなくなっちゃう。  メッセージも……なし……?  ギリギリと唇を噛みながら、紙袋の中を探って同じA4サイズのチラシを表裏2枚貼っていく。意識的に瞬きをして、滲んでくる涙がこぼれないように気を付けた。  ……鼻水、出ちゃいそ……  でも鼻啜ったら音が出る。  女子の先輩たちがきゃあって盛り上がるタイミングでこっそり鼻を啜って、顔が見えにくいように俯いて作業をする。秋川先輩の動きは今回も速くて、大きなポスターもすぐ貼り替え終わった。  僕が手伝うようなこと、ほとんどなかった。  さっき1枚クルンてなったポスターあったけど、これだけ女の子が集まってたら手伝ってもらえるし。  やっぱどっかで待ってればよかった……  落とした視線の先、秋川先輩の大きな手が紙袋を掴んだ。 「よしオッケー、ここも終わり。次行こ……っか……?」  やば……っ!  紙袋を取った秋川先輩に下から覗き込まれた。咄嗟のことで顔の向きを変えるとかできなかった。先輩が目を見張った。  泣きそうなの、バレた……っっ 「…あ……の、僕ちょっとトイレ……っ」  女子の先輩をかき分けて、小走りに廊下を進んで4階の1年生のフロアに向けて階段を駆け昇った。  バレた……っ 見られた……っっ  面倒くさいやつだと思われたっ  どうしよう……、せっかく、せっかく連絡先もらって、声もかけてもらったのに…… 「保科くんっ!」  秋川先輩の声と、階段を昇ってくる鋭い足音。たぶん何段飛ばしとかで昇ってきてる。  なんで……っ
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