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 15分くらい我慢して、次のメッセージを送った。  ーー保科くんて兄弟いるの?  ーーーひとりっ子です 秋川先輩は?  今度もすぐに既読が付いて、返信がきた。  保科くん一人っ子なんだ。うん、そんな感じ。  ーー2コ上に兄がいるよ もう家を出たけど  ーーーお兄さんがいるんですね  ーーうん そうだ、宿題で解んないところとかあったら訊いてね  ーーーはい でも  でも?  ーーー全然できてなくて  あ……  保科くんも俺とおんなじか  やば……嬉しい  ーーうん、分かった 俺もね、実は全然なんだ 保科くんのことばっかり考えちゃって  文字は残るから恥ずかしい、けど。  ーーじゃあ、時間決めようか 30分間勉強する、とか  初めてのことばっかりだから、丁寧に進めないと。  ーーーはい  保科くんを不安にさせたり、迷惑をかけたりしないように。  ……でも、困ってる顔はすごく可愛かったから、少しは困らせてみたい。    そんなことを考えながら、  ーー何分にする? 俺は明日提出の宿題とかはないから、何分でもいいよ  と送ったら、  ーーーじゃあ30分でお願いします  少し間を置いて、そう返信がきた。  ーー了解 解らないところとかあったら訊いて 30分経ってなくても  ーーーはい  ーーじゃ30分後にね  ーーーはい  スマホのタイマーを30分にセットして開始した。ふぅ、と息をつく。  切り替え、難しいな……。もう少しで期末テストもあるのに。  保科くん大丈夫かな。  よし、と気合を入れて再び教科書に目を落とした。ついつい何度もタイマーをチェックしてしまう。  ああでも、すごいな  俺、保科くんと付き合ってるんだ  取り留めのないメッセージのやりとりをするために「30分後にね」なんて約束をしてる。  今日の授業の復習をしている間にタイマーが鳴った。  ーー保科くん、宿題終わった?  ーーーあとちょっとです  ーーじゃあ終わったら連絡して?  ーーーはい  可愛いなぁ、保科くん。終わったって嘘ついたって俺には分からないのに。  少しずつ知っていく保科くんは、どこまでも可愛い。  ーーーおわりました  ははっ、かーわいいなぁ  っていうか、みんな同じフォントなのにそれが可愛く見えてるんだよなぁ。  どんだけ浮かれてるんだ、俺。  ーー解んないところなかった?  ーーーはい たぶん大丈夫です  そっかそっか  ーーそういえばさ、保科くん 敬語じゃなくていいよ?  ーーーそれはちょっと難しいです  ーー急には無理かな? でも俺はそう思ってるからね?  そのメッセージに既読が付いて、少し。  あ、困ってるな、保科くん。  顔、見たかったなぁ。絶対可愛かった。  ーーーはい  保科くんが、うんて頷く様子が思い出された。  ーー明日の放課後まで長いなあ  ーーーはい  結局、ドキドキして頭が働かなくて、たいした内容は送れなかったけど、メッセージの相手が保科くんだっていうだけで胸がいっぱいになった。  途中で将大から「電話いいか?」とメッセージがきて、「後で」と返信した。保科くんに「おやすみ」を送ってから将大に電話をしたら、「貴之とあの子がラブラブで帰ってたって噂んなってんぞ」って言われてしまって、うわっと思いながら保科くんと付き合い始めたと報告した。  将大は「思ったよりだいぶ展開早かったな」と笑っていた。  
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