Rin     67

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Rin     67

 びっくりした……!  びっくりしすぎてお弁当の中身が何だったのか、ぜんっぜん覚えてない。  でも、秋川先輩が半分に切ったハンバーグを食べてたのは覚えてる。  ……一緒にお弁当、食べた……  放課後まで会えないと思ってた。「放課後まで長いね」って先輩もメッセージくれてた。  結局なんであんなことになったのか、混乱しててよく分かってないんだけど、内野の先輩のおかげなんだよね?  月曜日は、みんなで学食……っ  思わず「明日」って言っちゃった。 「あー、戻ってきたー! 内野くん、保科くん、眞美ー!」  女の子たちに声をかけられて、あっという間に囲まれた。 「どうだった? どうだった? 先輩たちとお昼ごはんっっ! てゆーか何?! 内野くんの先輩と秋川先輩が友達なの?!」 「保科くん最近よく秋川先輩と喋ったりしてるよね?! どんな話したの?!」 「てゆっかみんな、次体育だよ! 着替え行かなきゃ!」  眞美ちゃんが「ほらほら、荷物持って行くよー」ってみんなに声をかけて、女の子たちを連れて更衣室に向かった。 「あ!芽依ちゃん!ごめんねー、置いてっちゃって」  眞美ちゃんが芽依ちゃんに手を合わせて謝ってる。芽依ちゃんは両手を胸の前で横に振りながら「全然全然っっ」って応えてた。 「あんな派手なグループに入れないもん」 「え? あー……、うん、そっか。先輩たちみんな目立つもんね」 「てゆっか……」  芽依ちゃんが僕たちの方をチラッと振り返った。  芽依ちゃん、内野も目立つって言いたいんだろうな。  その様子を見ながら、僕は内野と彼女たちの後ろを歩いている。  そういえば内野と2人って、今日初めてだ。  ……内野には、秋川先輩と付き合い始めたこと、言ってない。  眞美ちゃんには気付かれちゃったけど、内野には言うべきなのか分かんない。  それに内野機嫌悪いし。 「……保科さぁ、昨日あの先輩と帰ってたよな」  内野が低い声でボソッと言った。  ……また『あの先輩』って言った……。秋川先輩のこと……。 「帰ったよ?秋川先輩と。途中まで帰り道一緒だし」 「あー、そっか。第二中だもんな、秋川先輩」  ふーっとため息をついて、内野がポツリと言った。今度はちゃんと『秋川先輩』だ。 「遅かったけど、あの時間まで何やってたんだ?」 「生徒会の手伝い、することになって……。で、昨日もそれで……、あ、今日も行くんだけど」 「へー……」 「あ、内野ーっ、お前なんで松岡先輩にラチられてたんだよー。何やったのー?」  クラスメイトが笑いながら話しかけてきて会話が途切れた。 「別になんもしてねーし」  内野がクラスメイトをじろっと見て応えた。  ちょうど更衣室に着いて、さっきの話をもう一度する空気でもなくなって、それに時間もちょっと押してたから急いで着替えて体育館に向かった。 「……なんかさ、変わったよな、保科」  内野が僕をチラッと見て言った。 「え?」 「なんでもない」  スッと目を逸らした内野が、視線を落としてため息をついた。  結局内野は体育の間ずっと浮かない顔をしてて、でも動きはいつも通りビシッとしてて、隣のコートの女の子たちがきゃあきゃあ言ってた。
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