T      86

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「保科くん……身体、辛い?」  びくっと震えた保科くんが、更に俺にしがみついてくる。  やば……、かわい……  ドキドキし過ぎて心臓が苦しい。 「……せんぱ……」   う……わ……っ  (すが)るような目で見つめてくる保科くんの大きな目が、うるうると揺れている。  上気した頬に薄く開いた唇。思わずごくりと唾を飲み込んだ。 「せんぱいは、へいき……? ぼくだけ……?」  唇を歪めて泣き出しそうな顔で訊いてくる。  タメ口、かわいい……っっ  喋り方気にしてる余裕ないんだな。ちょっと舌っ足らずな感じにもなってて、めちゃくちゃ可愛い。 「平気…じゃないよ。すっごい我慢してる」  口に出してしまったら、歯止めが緩んできてしまう。 「ほんと……? せんぱい、も……?」  涙で潤んだ目をした保科くんが、俺にしっかり抱きついて見上げてきた。  赤くなった唇が開いていて、浅い呼吸を繰り返している。 「ほんとだよ。どうしよっか……。2人で我慢する? それとも……」  引くかな、保科くん。 「一緒に、する……?」  ダメもとで訊いてみた。  保科くんが、ひゅっと息を止めて、目を丸くして俺を見つめた。  どっちの反応か分からない。  空中を彷徨った視線が、ゆっくりと俺を捉える。  赤い唇が、ためらうように動いた。 「……ど…やって……?」  熱い吐息と共に、掠れた声がその唇からこぼれた。  ……これは…OK、だよな? 「俺もこんなの初めてだから……。2人で…してみよっか……。どう、かな……?」  息は上手く出来ないし、心臓は爆発しそうなほど強く打っている。  保科くんと触れ合っている腕や胸、それから背中や脚にも汗が滲む。  俺を見上げている保科くんが、唇をキュッと噛んでぎこちなく頷いた。  大きな目に今にも泣き出しそうなほど涙を浮かべている。 「…せんぱ…、も……ぼく……っ」  切羽詰まったような高い声に俺の方も煽られた。  保科くんの小さな唇を塞いで、力一杯抱きしめると保科くんも俺を抱きしめてくれる。舌を絡め合いながら保科くんの細い身体を抱えてベッドの上に押し倒した。保科くんは一瞬びくっとして目を見開いて、でもすぐにまた目を閉じながら俺の首に腕を回した。  ……す…っげ……、やば……  硬いジーンズの中はもうパンパンで苦しくて仕方ない。  保科くんも細い脚をもじもじと動かしている。  キスをしながら、そろりと保科くんのTシャツを捲り上げてみた。  保科くんがぴくりと身動いで、膝を合わせて脚を曲げる。  隠そうとしてんの、可愛いな  隠せてないけど  あちこち触りたいけれど、それより辛そうな保科くんをラクにさせてあげたい。  それに俺的にも全然余裕がない。  白いチノパンのボタンに指をかけたら、薄い腹がひくっと凹んだ。  ちゅっと唇を離して保科くんを見下ろす。 「…いい、よね……?」  いちいち確認なんかされたくないかもしれないけれど、確認しないと怖くて進めない。  保科くんが恥ずかしそうに手で顔を隠しながら、うんと頷いた。  その手のひらに口付ける。 「…せ、んぱ……、キス……」  保科くんが俺を見つめながら腕を伸ばしてくる。 「して……?」  か……っっっわいい……っっっ
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