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「そなたが不用意に受け入れるからこうなってるのだ。そなたは美しいものに弱いのも問題だが、同情を引かれるとすぐにコロッといくのがダメだな」
「もうー、わかってるよぉ……」
わかってるけど…でも、愛称で呼ぶことを許したらこうなるとか誰が思うよ!?
前までは、レオン殿下を無色である私が何かで脅して侍らせている、みたいな噂がほとんどだったが、今は私がヴィサス様を都合よく使ってるクズみたいになっている。
どちらにせよ最悪だ。
「それにしても、ヴィサスが愛称自慢を始めた時は、思わずそなたの身体で笑い転げてしまうところだったぞ?あれは傑作だったな!」
「もう!人のこと馬鹿にして!あのときは大変だったんだからね!」
ヴィサス様が愛称で呼び合うようになった話を始めた時は、あまりにも幸せそうな表情で語るものだから、2人が羨ましがって自分たちも愛称で呼び合いたいと大変だった。
もちろん、殿下2人を愛称で呼ぶなんて不敬な真似ができる訳もなく、丁重に断らせて頂いたが。
「そんなに言うなら、全部断ればいいではないか。何故大人しくしているのだ?」
「それができたら苦労しないの!魔王にはわからないでしょうけどね!」
だって、2人の殿下からお誘いを受けたら、立場上断りづらい。
それに、私に配慮してお付きのメイドでお誘いしてくるようになったから、余計に気を使ってしまうのだ。
むしろ強引な事をしてくれたら、こちらもそれ相応の対応が出来るのだが……
まあ、何故かたまたま毎回のようにヴィサス様が乱入してくれるおかげで、二人きりにならずに済んでいるのが唯一の救いか。
「ふーん、人間たちは何かと大変だな」
「…他人事みたいだけど、ルナも同じ身体なんだから関係あるんだよ?」
「ふむ、そうか?なら、妾が何かしたほうがいいのか?」
そう言われて、私は想像してみる。
…………うん、ないな。
「ごめん、やっぱり何もしない方が良いかな」
「そうであろう?まあ、そなたの中から応援してるから、もしものときは妾がなんとかしよう」
「……そのときはお願いするね」
あまり期待しないでおこう。
コンコン。
「メアー?そろそろ行かないと遅刻しますよー?」
「あ、もう少し待ってください!すぐ行きますので!」
扉からノック音とヴィサス様の声が聞こえる。
ヴィサス様とは毎朝一緒に登校する約束をしており、朝はいつもこうやってヴィサス様が迎えに来てくれるのだ。
時計を見ると結構いい時間。
ルナと話していたら、いつの間にか始業時間が迫っていたらしい。
私は急いで支度して、外で待っているヴィサス様のもとに向かった。
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