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「貴方、どういう了見ですか?この国に住む者なら誰でも知っていることを…不敬罪に問われたいのですか?」
2人のところに向かったのはヴィサス様だった。
鋭い視線で女__イーリスを射抜くように睨みつけている。
急に現れた新参者で、その上大して親しくもないくせに馴れ馴れしい態度に、だいぶカチンときている様子。
まだレオン殿下は何も言わない。
「なんですかー?アタシがレオン様と仲いいからって嫉妬しないでくださーい」
「はぁ、話が通じない人ですね。そもそも貴方はレオン殿下と親しくもないでしょう?思い上がりも甚だしい。恥を知りなさい」
「は?何よそれ!アタシはあのヘルディンよ!?アタシはアナタと違って特別なんだから!」
「全て事実でしょう?いくらあのヘルディンだったとしても、分別はつけるべきです」
ヘルディン?それってそんなに特別な名なの?
なんかみんな当たり前のように知ってるけど…
ってか、あのルナさえ知ってるんだけど、なんで?
「うるさい!だいたいアナタ関係ないじゃない!いちいち突っかかってこないでよっ!」
「貴方がしっかりと分別のついた行動を心がければ、私もこんなこと言わなくてもいいんですけどね」
「くっ!このっ!」
「っ!」
「「「きゃあーっ!」」」
「あ、ヤバっ!」
私が考え事をしている間に、向こうはさらにヒートアップしていく。
ついに、イーリスが手を振り上げた。
辺りから悲鳴が聞こえる。
ヴィサス様も思わず目を瞑った。
私は、このままでは危ないと急いでヴィサス様のもとに向かう。
「…黙れ、静かにしろ」
小さく、だがはっきりとレオン殿下から声が聞こえた。
辺りが騒然としているにも関わらず、不思議とレオン殿下の声は響き渡り、一瞬で教室内に静寂が訪れる。
イーリスも、レオン殿下からの予想外の一言に振り上げた手が途中で止まった。
そんな中、私はレオン殿下から今まで感じたことのない不穏な空気を感じ取り、思わず動きを止める。
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