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「……なるほど。そんなことがあったんだね…」
「はい!もう信じられませんよね!」
話している内に感情が高ぶってしまい、つい声が大きくなってしまう。
「それは辛かったね。きっと君の心は非常に傷ついてしまったことだろう」
「そうなんです!もう辛くて辛くて…!」
私の悩みをこんなに理解してくれるなんて、やっぱりこの方は私たち貴族のことを一番に考えてくれる尊いお方!
「なるほど……やはり、いろんなところから情報は得るべきだな…誰が主観になっているかで結構齟齬が出るみたいだ……」
「ん?何かおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもないよ。そうそう、無色の公爵令嬢に傷つけられてとても辛いであろう君には、これをプレゼントしよう」
そう言って、ポケットから小さな小瓶を取り出す。
小瓶は透けていて、中の薄紫色の液体がタプタプと揺れているのが見える。
「なんですか?これは」
「これは、インキュバスの体液から作られた媚薬さ」
「インキュバス?媚薬?」
「そう。これは匂いを嗅ぐだけで強烈に発情し、直接体内に取り込めば理性など効かず、交尾のことしか頭にない獣と化す。そういう薬さ」
「え!?それはそれは恐ろしい薬ですね……ってまさか…」
「そうさ。これをみんなの前でメアリー嬢に接種させることが出来れば……」
「みんなの前でこれ以上ないほどに醜態を晒してしまう……」
「そうなれば、メアリー嬢はもう人前に出てくることはできまい。なにせ、交尾のことしか頭にない獣になった姿をみんなに晒すんだからね」
「それはそれは……」
なんて甘美な響きなのだろう、そう思った。
これをみんなが見ている前で飲ませることが出来れば、二度と外に出てくることは出来ないだろう。
そうなった瞬間を想像すると、あまりの快楽に身体が震える。
それは、無色であるあの女にお似合いだと、心からそう思った。
「さあ、これをあげるから後は好きにすると良い。きっと、君の思い通りになるだろう。それじゃあ、頑張ってね」
そう言って、私の手の上に小瓶を置く。
「ありがとうございます!これを使えばあの女は……さあ、行きますよ!二人共!」
「あ、はい!」
「ちょっと待ってくださいよぉー」
小瓶を受け取り、放心していた二人に声をかけてその場をあとにする。
今後のことを思うと、心が躍ってしょうがない。
早くあの女が地に落ちるその瞬間を見たくて、自然と足が速くなる。
「覚悟しなさい…貴方を地の底まで引きずり下ろして上げる……!」
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