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そうか?と一つとります。 「木に触らぬように実だけをとればよい、べたついたら洗えばいいではないか」 半分に割くように割ります。完熟です、甘い匂いです、イチジクです、かぶりつきました。 「うん、おいしい、食べなよ」 ヒョウさんに渡します。 「こりゃいい、ジャムもいけそうだな」 「うん、これだけありゃ喜ぶね」 「ねえー」 さっきの子。 「美味しいの?」 おいしいよ、どうぞ、皮は残せよ。 「うまーい」 「だろ、早い者勝ちだぞ」 子供たちが群がります。 ほら、ともぎ取ります、高い所はヒョウさんが取ってくれます。あっという間に一本なくなりました。あそこにもあるぞという声がすると、ワッと群がっては移動します、しめ、しめ、たいぶ門に近づいてきたぞ。 子供たちはいっぱい取っているけど日持ちしないんだよね、んー、砂糖も高いしなー。 あ、そうか、これで釣ればいいかも。 日持ちしないから煮ることを話します、女の子たちはうん、うんと聞いてくれます。 「なあ、神様、本当に腹いっぱい食えるのか?」 「あー約束しよう」 さあ行こう! 張りぼての門をくぐりました。 「どうした、行くぞ」 「・・・いけない」 どうして? 「向こうに言ったら生きて帰れない」 どうしてだよ? 「だって、クワイエット(猫族)以外に食われるから」 は?ない、ない。 「このおじちゃん、向こうから来たんだよ?それでもダメ?」 だって神様に仕えてるんでしょ死なないもん。 「いや、死ぬし」とヒョウさん。 「死ぬよね」といってしまった。 嫌だ。 いけない。 んー、なんでかなー? 「ツべこべ言わないで来い!それが嫌ならここで死ね!」 ヒエー、それはいっちゃいけないでしょ。ずんずん歩いて行っちゃうし。 「待ってよー」 「かえるぞ!」 「はーい、じゃね」 もうちょっと言い方があるでしょ。 もう、あいつらみてると、イライラするんですよ。 どうどう、あそうだ、袋から小さな木の欠片。マタタビ、もってきてよかった。 「はいこれ」と小枝を出すと匂いを嗅ぎだした。 「すみません、はー、落ち着く」 そうだ。 マタタビ袋を持ち上げ、さようならと振ってみた。 子供たちの顔が変わり、飛び出す子もいる、しっぽをぶんぶん振り回している子、みんなの耳がピコピコで楽しい。でも、こっちには来ない。 「仕方がない、帰るとしよう」 「そうしましょう、そうしましょう」 「あ、あの!」 「待ってくれ!」 振り返った。 「本当にあなたが神なら教えてください、あの門をくぐったら僕たちは幸せになれますか?」 そうきたか。 少し大きな子。 この子たちなら大丈夫かな? 「幸せは自分でつかみに行くものだよ、それができないのなら幸せにはなれないなー。でも、君たちは私を神だと思ってついてきた。違うかな?」 嘘だ!騙されるな!という子供たち。 どうしてと聞くと黙って睨んでいる。 「んー、もしも、幸せになれると言ってあそこの向こう側に行った、でもその人は帰ってこなかった?それとも幸せになれなかったと言って戻ってきた?」 そうなのか? 知らねえ、だって大人がいくなって。 「俺は神様なんて信じねー!」という子がいます。 「それでいい。神様はどうか知らないけれど、私があなたたちを幸せにしましょうというのは胡散臭いだろうしね」 「ねえ、胡散臭いって何?」 「さあ?」 アルベルトさんにこそこそといいます、門を一歩出たら着替えます、見えないようにしてもらえますか? わかった。 「さっきの木、きみたちは知っていたのに、食べ物だって知らなかったけど、私についてきて、食べ物だと知った、それは幸せではないのかい?」 じりじりと子供たちは距離を縮めています。 門番が出てきました。 ヒョウさんが私の後ろに立って隠してくれます。 顔を拭き、いつも着ている服に着替え振り返りました。 まあいいか。 ヒョウさんがどきます。 「おー」 「すげー」 「にいちゃ、耳、耳」 あ、ヤバ、カチューシャをもう一度被った。 「おー!」 なんのおーだよ。 「ここをくぐったら住むところと食べるものに困らない生活をさせてやろう、だがそれだけではだめだ、なにをするかわかっているか?」 何をすればいいって言ったって……。 痛いのや辛いのは嫌だしな。 お腹すいたーと泣き出す子もいます。 「働く?」といったこの前に立ちます。 「そうだ、慣れるまでは大変だが、私は幸せになれると思っているよ、さあ新世界へようこそ」 でも、みんな躊躇しています。 私の隣にヒョウさんがきました。 「調べます」 「お願いします」というと、兵士のいる方へ走り抜けていきました。 男の子が二人、前に来て振りむきました。 「俺は行く、ここにいても死ぬのを待つだけだ、生きる、俺は生きてうまいものを食う。だから行く!」 歩き出した子。 「俺も行く、もう腹が減って死んでいくやつらを見るのは嫌だ、俺も行く!」 それを見ていたのはアロー叔父さん。 ヒョウさんが話し終えると並びました。敬礼のようにした手をかっこよく投げかけた、後はお願いします。 歩き出した子たちを先頭にぞろぞろと門を潜り抜ける子供たち。 うわー。 「ようこそ、ラグラダ国へ、先にみんな風呂に行くぞ!」 おー! いいにおい。 スゲー、いろんな人がいる。 「ヨ~、チサ、スゲー数だな」 「これからの住人だよ、よろしく」と手を振った。 「ヨ~、チー、スゲーな、こりゃっまた」 「新人だよ、よろしく」 私のマネをして歩く子たち。 「チサ―、今度は何するんだい?」 「おばあちゃん、新人、よろしく」 「そうかい、頼んだよ」 ねえ。 ん? ズボンを引っ張られた。 「かみちゃま、ちゅごい」 「神様、チーっていうのか、スゲーな」 「僕は、チサ、チ・サ、よろしくな」 皆こっちだ。 「サー行こう、みんなおいで」
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