第58話 なげた匙

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第58話 なげた匙

それからはすぐでした、多くの難民が門を潜り抜けやってきます。 もちろん兵士たちもです。 「さあ、さあ、安いよ、安いよ」 「冬の蓄えにどうですか?」 「うまくて安くて腹いっぱい食べられる卵ドンブリだ、食っていってくれ」 「イチジクのコンポートだよ、甘くてほっぺた落ちちゃうよ!」 子供たちは門を往復しては、イチジクを煮て小銭を稼ぎ出したのです。 よぼよぼの爺さんに手を引かれた小さい子です。 「すまぬが、施しを…」 「申し訳ありません、施しはできませんが、少しのお力をお貸し願いますか?あそこに行っていただければ、食事と風呂に入れますよ」 「おー、すまぬ、ありがとう」 サーて、僕は、いつものところへ行くか。 「チサ、よー」 「こんにちわ」 「チサ様ー」 子供たちが走ってきた。 「ヨ~、どうだ?」 「たのしいよ」 「毎日、ごしごししてるの」 ごしごし?ああ風呂そうじか、そうか偉いなー。 「そっか、ちゃんと食べてるか?」 「うん、昨日助祭様たちとカレー食ってきた」 「ははは、そうか」 じゃあな。 ばいばいー。 すっと寄ってきた男の子二人。 「チー、いた」 「いたか?」 こっちの様子をうかがっただけで行ってしまったという。 「いったか、付けていくなよ」 「でも」 そこから先は大人がやる、どこへ行ったか分かりさえすればと上を見上げ指さした。 二人も上を見ると、手を振る人。親指を出している。彼らは兵士ではないが、力がある人たちや目のいい人、上から見守るだけでいいのならと手を挙げてくれた人たちだ。 チサを見ると同じように親指を出していた。まだ探った方がいいかと聞いた。 子供が誘拐されないように見張ってくれるだけでいい後は任せてくれ。 「わかった」 「じゃあな」 「おう!」 歩き出します。 私と目が合うと合図をしてくる大きな子たち。 彼らには子供や、自分たちの国の民を守るため見守りをしてもらっています。 お金はちゃんと出します。 彼らは教会に務める少年少女兵士たちなのです。 「ほお、すごいな」 「ここまで十日余り、一つの国でもできそうですね」 「まあここは特別区だからな、しっかりと取り調べはしてくれよ」 「はっ!」 「すまぬ、道を尋ねたいのだが」 「はい、どちらでしょうか?」 その子は猫族、胸には案内と書かれています。 「ン?そなたは、ここの傭兵ではないのか?」 「私は難民で兵士ではありません、街の案内だけをさせていただきています」 ほう。 「どちらへ参られますか?」 「ああ、領主様のところへ行きたいのだが」 「それでしたら…」 すまぬな。 「おきおつけて、どうかなさいましたか?」 このようなことまで仕事にしているのか? 「ヒューゴ様、調べてまいります」 「頼む」 にぎやかだなー。 「ようこそラグラダ国へ、ゆっくりお進みください」 「止まらないで、もう少し先に広場がありますからそこまで行ってください」 「教会は向こうです、お困りの方は遠慮なさらずにどうぞ」 ほう? 「俺たちもな、門をくぐったら死ぬって思ってたんだ、そしらさー神様が現れてさ、もう、見てくれよ、この格好、いいだろ、うまいものが毎日食えるし、仕事もくれるんだ、この国最高だよ、え、仕事か、この一番奥にギルド、っていう場所がある、そこに行ってくれ、やる気さえありゃ、なんでもあるからよ」長い棒を持って話をする彼らもここを守る少年兵たちです。 ほう。 男はしばらく歩いていました。 わー! 子供たちが笑いながら走り抜けていきます。 こんなにぎやかな人通り、なん十年ぶりだろう? 「ヒューゴ様」 「オウ、どうであった?」 「ウソではありませんでした、それと、受付なることをすればその時間にあっていただけるとのことで、名前を書き、番号札をいただいてきました」 ほう、かわっておるの。 それともう一つ。 ん? 「ハハハ、いいではないか、われらは国を捨てたのだ、いまさら何を着飾ることがある、まっさらな体でこの国に染まろうではないか」 「はい、では向こうです」 私は、領主さまのお城にいます。 お城は前と働きが違いますから、領主さまはここには住んでおりません。あくまで仕事場です。 「はー」 「大丈夫ですか?」 お茶を出しました。 ここには領主さま、各特種な職種についているトップの方々がいます。 アロー叔父さんもその中の一人ですが、今はお出かけ中です。 「まったく、どうなっておるのだ、一国全部の民が来る勢いだぞ」 「ですが、本当に上にいた方が来るのでしょうか?」 彼は領主さまの息子さんです。マリー様の好きなのは彼ではないかなと思っています、態度がそんな感じなんだよね。 「でも一応ここへ来るように手紙は出したんだよね、こなきゃ冷やかしだと思っておけばいい」 「チサ、お前は…」 「やることは多いですよ、お二人とも頑張ってくださいね」 「はー、ため息しか出んぞ」 「父上、頑張りましょう、マリーも頑張ってますから」 「そうだな、やってしまわねば」 お姫様の好きなのはおじさんもそうですが、彼、ここの息子さんです、もう彼にあうと目がハートだもん。 ノックがして少年が顔をのぞかせました。 「チサ様、受付にこのような方が」 それを見ました。 「領主さま、いらっしゃいましたよ、三十分ほどでお見えになります」 「そうか」 ありがとう、時間になったら行くね。 その頃、町の見張りをしている子供たちがある場所へ行くと、見張りんこそこそ話しては戻っていきました。 その話は、アロー叔父さんの部下にちゃんと伝えられていました。 誘拐しようとした大人たち、失敗するとあるところへ向かっていったのです。 「顔にさ、ここに傷があったんだ」 「傷か、身長は?」 「あれ、赤と青の間ぐらい」 「結構でかいな」 「もう一人はその下、黒い線」 「そっかありがとうな、これをギルドに出してお金をもおらえよ」 「毎度あり」 「あー、ありがとうな」 チサは領主に頼み、主要な場所に色のついた線を付けたのです。それは身長を見るためのものです。写真がないですからね、人相書きも当てになるかどうかはわかりませんから。 そのころアロー叔父さんは隣の領土、バーシアの城へとやってきました。 城の上で両手を振る人。 アロー叔父さんは鳥族の人に合図、下へと降りました。 「ご苦労様です」 「ご苦労、して、何か話したか?」 首を振ります。 「死なれても困る、見張っとけ」 はっ! 隊長。 「末端まで聞いたか?」 それはまだという。 色街作戦はカスーチャへ人を呼ぶための物、何もナストールだけではなく、国内の人も集まるのは必至。特にバーシアは貧困しているので、特に流れてくると踏んでいた。子供たちはいい情報を持ってきていた。 多くの男がやってきた、だがその中には明らかに女子供を誘拐しようとしているやつら。 先に町に来て情報を集めていた兵士たちは、すべてを集め、カスーチャの兵士たちや民兵となって後から来た兵士たちとともにバーシアの城を陥落させたのです。 王様は料理教室の時捕まっていたのに、なぜか機能していた城の中。 すべての人を尋問します。
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