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城の中にいた者は、何かにおびえるように、皆口をつぐんで、人の顔色をうかがっているという。 「ユニはどうした?」 使いの子供たちに話を聞きに行っているという。 そうか…。 「見つかるでしょうか?」 「見つけなければなるまい」 ですが…。 「人間か?」 そこだけは皆口を閉ざすという。 それを知るものは? シノア様だけかと。 「奥方の消息は?」 それも、と首を振った。 「そうか、ありがとうな、これをお食べ」 頭を下げて走り去る子。 「ユニ様、最後の子です」 どこにいた? 地下牢で、罪人に食事の世話をして居た子で、地下の厨房に隠れておりました。 「地下に人はおるのか?」 すべて出していないと思いますが、今一度調査をしています。 部屋に入ると男の子がちょこんと椅子に座っています。 「あのー?」 ああ大丈夫、ちょっと話を聞きたいんだ、と椅子に座り、男の子の前に座りました。 「私はユニ、兵士で国の部隊のものだ、こいつはライラ、話を聞かせてくれるかな?」 うんとうなずく子。 ライラは紙を出し何かを書き始めます。 「名前は、ルーベと」 「ルーベ、間違いはない?」 こくんとうなずいた。 「ルーベ君、親はいるのかな?」 首を振りました。 「あのー、王様は?」 「王様?」 「えーと、ボルート様は?」 ボルートは自分で王だといっていたのかい? 先代の領主さまがお倒れになってから自分の事を王だと、それを認めない人が牢へ連れてこられていたという。 ボルートは悪いことをしたから掴まったと話しました。 ルーベはほっとしたような顔をしました。 「あの?悪い事って?」 他の領土で子供を殺そうとして捕まって牢屋にいる。 「子供!その子は人間ですか?」 ん? 「いや、一人は豚族もう一人は、んー、なんて言っていいのか?」 ドアが開きました。 「隊長!」 二人の兵士は立ち上がりました。 手を振るアロー。 「もう一人は竜の子だ」 「竜、ドラゴンの子ですか?よかったー。あの?その子はサーダルリアーの聖職者でしょうか?」 「聖職者?いやそうではないが、ユニ、この子の名は?」 ルーベです。 「ルーベ、何故竜の子が聖職者だと?」 するとその子は急に体を固くし、床をじっと見つめました。 「大丈夫、私たちは君の味方だ」 「…味方だって言って、結局、みんな牢屋に入れて殺すんだ」 殺されたのか?どうしてそう思う? 「…そう思うって、死んだ人を片付けたのは死んだじっちゃんと俺だもん」 死人を片付けるのは昔から君の家族か誰かがやっていたのか? 首を振った。 いつ、誰かから言われてそれをするようになったのか教えてくれないか? 領主さまがお倒れになって、アルリア教の五教主だっていうイブロって言うのがやれって言った。 そうか、ルーベ、教えてくれないか?プレシアという女性を探している、人間だ。 「死んだよ、領主さまが倒れる前に、シューゲイル様と牢屋に入れられて、鞭で撃たれて、病人の世話をさせられて人間は病気にならないからなって、ひどい所でさ、そんなんで、病気になって死んだんだ」ルーベは淡々と話します。 シューゲイル様は息子だな、今何処にいる? 「・・・」 「ルーベ、知っているなら教えてくれないか?」 男の子は顔を上げこう言いました。 「教えてくれる代わりにいくつか約束してくれますか?それが出来ないのなら、私は舌を切って死にます」 「わかった、約束しよう」 男の子は、サグラダファミリアへ連れて行ってほしい事、もし、そこに、シューゲイル様がいてもいなくても僕を守ってほしい、そしてシューゲイル様も守ってほしい。 叔父さんは約束しました。 只一つだけ、まだ隣の領土も落ち着いていなくて、一度隣へ行ってからでもいいか? 彼は、少し考えていました。 「ユニ、この子を守ってくれないか?里帰りもよかろう」 「里帰り?」 「彼も教会の出なんだ、孤児さ」 すると彼の顔がゆがみ、目からぽろぽろと涙がこぼれたそうです。 「お、奥様が、俺とシューゲイル様を一度だけサーダルリアーへ連れて行ってくれて、小さかったからよく覚えてないけど、何かあった時はここへ逃げてきなさいってよく言っていたんだ、死ぬ間際まで、俺たちの事を案じて」 叔父さんが抱きしめると、ワーッと彼は声を上げないたのでした。 私たちは教会関係者のような白いローブを着て、面会場へ行きます。 相手もまた、武器など持っていないか、確認のため、着替えていただきます。 それが嫌ならあいません。 もしも武器などかくして入ろうなどとしたらそこでアウト、捕まえます。 入っていくと、イスから立ち上がった二人のライオンさんです、かっこいいです。 「どうぞ、お座りください」 皆が座りました。 「私が領主だ、こっちは息子、そして」 「チサ・ノマージュと申します、どうぞ、毒などは入っていませんよ」 皆にお茶を差し出しました。 「さて、どのような要件でしょうか?」 「ご挨拶が遅れました、わたくしはナストール国で宰相をしておりました、ヒューゴ・ムエリハルと申します」 「同じく、第一部隊総長をしておりました、ゲッヘインと申します」 「まずは、お礼を、民をすくっていただき感謝いたします」 そして、彼らの国が抱えていることを聞きました。 やはり、バックにはあの教団。そしてその後ろにはある帝国が関与しているようです。 ヒューゴ様は一連の話をしてくださいました。 「王様、これでは国は動かなくなりますぞ」 「お願いいたします、もうこれ以上国益を取り崩しては、国は傾いてしまいます」 「うるさい、この国は私のものだ、私が何をしようがお前らに言われたく無いわ」 「わかりました、ではご勝手に」 「王様、よろしいのですか?このままでは兵の統率もできませんぞ、一国を滅ぼすなど夢のまた夢」 「おい」 「はっ」 「もしかしてお前か?火攻めにしようとしたのを漏らしたのはお主か?」 「わたくしは!」 「もうよい」 ちっ! 舌打ちをして、男は足早に去っていきました。 「王様」 「捨て置け!」 「ですが」 「かまうな、出て行きたい奴は出て行け」 「その言葉、本望でもうされるか?」 「は?別にいいよ、お前らいなくても」 「……わかりました」 「宰相様?」 「皆のもの、今の言葉聞かれたな、私は、この国の民のためにここにいると思ったがそうではないようだ、私は、こいつについていこうとは思わぬ」 「こいつだと!」 「父上様の時は、民をしっかりと支えていた、だがお前はなんだ、周りに振り回されているのがわかっていないようですな、今のままでは自滅しますよ、どうぞ、ご自由にしてみるがいい」 宰相様どこへ。 「こいつは今皆を首にした、さあ行こう、ここにいる必要ない」 「あー、なんだと?!」 「世話になった、違うな、世話をしてやったのは我々だったな、ハハハ、皆行こう、こんな奴の下でなど働くことはない」 「宰相!」 「私の名は宰相なのではない、最後くらい名前で呼んでください、はは、名前など、どうでもいいのでしたな。では、出て行きます、さようなら」 ドアの向こう側で騒いでいるものがいます。 「どうしますか?」 「どうもしなくてよい、私についてきたいものは、簡単に荷をまとめ、新しい村へ参るぞ」 「え?辺境の地へですか?」 「辺境にしたのはあのバカ息子だ、私だけでも行くぞ」なにが、猫族だけがいればいいだ、だから偏ったことしか見ることができぬのだ。 前王の時代までは、各国との貿易もあり、今のように閉鎖的ではなかった。 「今の王様になられてから変わられたと?」 「憶測でしかありませんが、前王が亡くなってから“ある者”たちが入り込むようになりました」 「ある者とは?」 アルリア教会のものです。 「ひとつお聞きしても?お葬式は、アルリア教会ですか?」 いいえ、菩提は国の中心である、王都ナシスに墓地がありますので。 じゃあこの国とは違うな? 「もう、一つ聞いてもよろしいですか?」 はい、何なりと。 「猫族だけにしてしまったのもその教会が入り込んできてからですか?」 もともと、猫族が多かったのは、五大国の中で一番南側だったからです。 豚さんも寒さに弱いよね。と領主様に尋ねると。 ああ彼らは、熱さにも弱いために、涼しいところに集まったといってよいでしょう。国を作るまではいかなかったようですが…。 国を作れなかった?…のか?……そうか、そういうことか。 グレゴ国のことも納得できた瞬間だった。
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