1/1
前へ
/54ページ
次へ

ムー! どうした? おお兄ちゃんです。お風呂上がりで頭を拭いています。 私の前には、瓶に入ったイチジク。 ふわりと頭にタオルが乗って、ガシガシと頭をふいてくれます、まだ濡れていると言いながら。 「あのね、あのね」 私は、わらしべ長者という昔話をわかりやすく話し“わら”から物々交換していって、最後はお金持ちになって幸せになる話をした、そして、ここまでにはなったけど、ここから続かないような気がすると瓶を持ち上げ話した。 「あのなー」 いつも、いつも、都合よくそんなお金が入ってくるわけはないだろうという。 「お金あるよ」 「だからー。」母ちゃんや長老からもらう小遣いを使わなければたまるよな。 私は口をとがらせ、「お金なんかもらったことないもん」と言いました。 「もらったことないの?」 お金は確かに預かるけど、自分のために使うお金は誰にももらったことはない。 「そうなのか?」 でもお金は持っている、その金はどうしたんだと聞かれ。 「稼いだ分」 「は?」 「だからー、最初はね」 私も振り返ってみて、不思議だなーと思うようなことばかりだった。たった一個の石、それがリンゴになり、パンができた。そこから枝豆爺さんと出会い、トウフを作るにがりに出会う。教会に教えたモノたち、それが最後には、お金になって、手元にやってきたんだと話した。 たった一本のわらにトンボを付けた、お菓子になり、隣国の要人と出会うきっかけに。 「それ、長老は知っているのか?」 「当たり前、お金は管理してもらってる」 そうか―それはすごいなー、それで、そのビンがどうしたんだ? これはイチジクを煮たものだそうです。 「売れないんだよねー」 「まあそうだよな、食べなれないとな」 「アー、そうだよ、べとべとの木だからいやだって、そうだよ、たべてもらえばいいんだ!」 立ち上がって、行ってくるという手を引っ張られた。 「バーカ、夜、寝る時間」 ははは、そうでした。 明日にしろ。 うん! チサはベッドに入るとすぐに眠ってしまった、まったく。 でも、すごいな、大人になったら商人でもなるつもりなのかな? 俺は瓶を見た、確かにおいしいけど、どうなることやら。俺もチーの隣に入って寝たんだけど、次の日、それが、商品となっていたのには驚いた。 何を作ったかって? そのままさ、ただ、煮ただけのイチジクを瓶に詰めた。それがまあ甘いのなんの。切ったパンに乗せて出した、そう、教会でもやった試食だよ。 「さあ、さあ、見て食べて、あのべとべとの木からこんなおいしい実が取れるよ!さあ、買った、買った!」 「なあ、アイジュ、アイツは商人にでもなるつもりか?」 俺の隣で腕を組んで言うアロー叔父さんを見上げた。 「なんだよ?」 「いや別に?」 俺は同じ考えだったって言おうとしたけど、首をひねっている、まあいいかと思いながら、ただおかしくてくすくす笑っていた。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加