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春になってやっと人々が動き出したころ、あいつらは国境のすぐそばに村を作りました。 「村ですか?」 気にも留めていなかったナストール国。 ここは熊の国グレゴに戦いを挑み、人々を追いやることで、領地を手にしたと聞いていたけど……?あれ?豚さんは?? だからこの国には手を出してこないと言い張った王様、自分の父親にもっと危機感を持てと言っていたところだったそうだ。 すごいジャン姫さん。 国境の門を焼かれ、兵士に切りかかり。城壁にはしごをかけ、国境を無断で越えてきた。 それ、やばいじゃん! 「それで?カス―チャ領の民は?」 門付近の人がけがをしただけで何とか追っ払ったが、城壁のあちこちには簡単に侵入できるようになってしまったというのだ。 パパさんがやってきた。 手招き、彼女は王様の娘であること、今、隣の領地の話をしているので聞いてほしいというとうなずいて、私の後ろに座った。 「王様はご存じなのですか?」 「知っています、伯父は何度も助けてほしいと言ってきているのに、自分のところは何とかしろとばかり、叔父上は怒って、王都で何が起きても手は貸さないと言って…」 ああ、それでバーシア領の領主は、隣であるナストール国へ領地替えをしようとしていたのか? でもそれだと領地が飛んでしまう…アーそうか、これにあの教会が絡んでくるのか。そういうことか、だんだんわかってきたぞ。 爺ちゃんは知っていた? 初めて聞いたという。 でも隣の事だよ? おかしい、聞こえてこないはずがないというのだ。王様は隠していたということかな?政治は嫌いみたいだしなー。 王様は下手に流すより隠せと言ったそうです。 「なんだと!」 爺ちゃんの怒ったのを久しぶりに見たような気がします。 聞こえてこないのならそうだろうな?ちょっと話を変えよう。 「姫様、昨年、この領地で何が起きたか知っておられますか?」 昨年ですか? 「ああ、確か…子供がさらわれたとか?」 「ご存知でしたか」 私を出さなければ民を殺すと脅されていた。でも民が流れていたことに気が付き、なにが起きているのか知ることが出来、早い対処ができました。 「…チサ様のお命が狙われた?」 そうだよ。 「どこの国ですか?まさか、五大国のどこかですか?」 今は違う、この国ですと答えることはできません。「ちゃんとした証拠がないからお答えできません」と答えました。 父上は、話を知っていながら、結局動かないでいる、兄は、それを知っているから勝手に動いて空回りしていて、といいながら、またぎゅーっとスカートを握りしめた。 なんだかかわいそうになってきちゃった。 「3年前、多くの国が甚大な災害にあったのはご存知ですね?」と爺ちゃん。 こくりとうなずいた。 民は食べるものを探しに山へ入りました。 飢えをしのぐため、彼らは危険を冒し隣の国へと入っていった。 だが彼らの末路は悲惨なものとなった。そんなことがあったのか。 「…… わかっています、我が国は、ここ、カーニャ領のおかげで、飢えをしのぐことができたのに、父や兄は我が物顔、情けなくて」 私は、彼女が王だったらよかったのにとどこかで思ってしまった。民のこと、他人のことを考えられるのは素晴らしいことだ。 「叔父上は父のことをよくわかっておいでです。ですから自分で何とかしようとして・・・」 しようとして? 「お怪我でもなさりましたか?」 大したことはない、腰をちょっといめたぐらいだという。 「姫様はおじさまのことが大好きなのですね?」 えっ?と顔を上げると、ほほがポッと赤くなりました。 そういうことか。 「すみません」 パパさんがひとつ訊ねたいと言いました。 彼女は私が知っていることでしたらと言いました。 「カスーチャ、いやバーシアへ兵士の増員をしたのは王様でしょうか?」 へー、増やしたんだ。 彼女は首を振りました。 「ではどなたが?」 「…宰相様です、ですが兵士は…」 兵士は? 「カス―チャ領へは行かなかった」 「……はい」 まじかー。 くそっ!パパさんはそういいました。 「…チサ、ちょっと」 すみません、ちょっと席を外します。 廊下へ出るとパパさんは、アロー叔父さんが兵を向かわせるように頼んだんだそうです、でも蹴られた。行かなかった、止めたのは王様だというのです。 ・・・ん?どういうこと? 人が少なすぎる、危険だということで増員を頼んだ。 問題が起きているのはバーシア、だからまっすぐ行けば、お金も人も少なくて済むというのが王様の判断。だがそこには問題があるから、少なくてもカスーチャから行くと言っていたそうだ。 問題? 「ねえ、今アロー叔父さんはどこ?」 パパさんは顎をさすりながら、こう言いました。 隣だよカス―チャ領だ、それもそろそろ抜けるころだというではないか。 でもな、アロー叔父さんは、国の兵たちの頂点だそうですから、この時期は、王宮へ行っていたはずじゃあないのと聞きました。 本来ならなと言われました、何かあるな? でもな、行き先はバーシアならば…。兵士の数が少ないか―……叔父さんまでも行かなきゃいけないほど?まさかそれが漏れていたら?でも増員したのがカスーチャへ行くって、一緒じゃない?ウソー、それって!まずいじゃん! 「パパさん、地図はある?できるだけ細かいやつ」 パパさんは気が付き走り出しました。  私は中へ入り、今地図を持ってくるので、教えてほしいことがあると彼女に言うとうなずきました。 「少し、休憩しましょう、爺ちゃん、ケーキ食べる?」 「ああ、少しもらおうか」 ボブさんも食べるよね。ああ。 お茶も入れなおすよ。 シフォンケーキです、かわいいバラのクリーム付きです。 「はいどうぞ」 「うわー、これはなんですの?」 「ケーキというおかしです、バラのクリームを崩してつけて食べて」 「これもチサ様がおつくりになられたのですか?」 まあね。 「いただきます。おいしい」 いい笑顔だ。 幸せそうな顔、これがずっと続けばいいのにな。 パパさんが戻ってきました。 テーブルの上を片付け、広げます。 「まず、増員した兵士を引っ張っているのは誰でしょう?」 「そこまでは」 「ですが、アロー隊長たちは先に動いているのでは?」 「それはありません、だって私を送ってくださったのですもの」 それなら、後者だ。 「パパさん」 「ああ、姫様、相手が攻め込んできた門はどちらですか?」 「南側と聞いています、これでしょうか?」 南、山か? いくら城壁があると言っても、山があるから、手薄になると踏んだか? 梯子なんかかけたのはこっち側全部でしょうか? 「いいえ、地図を見てはっきりしました、山側です、もしや、城壁が低いのでは?」 さすがだな。 「さすがです、たぶんそうでしょう」 村はどこにできたのですか? この辺と聞いています。 指さすところは、だいぶ離れているな? 山から離れていますね?というパパさん。だよね? 「こちらの門のほうが近いですね、どうしてかしら?」 「じいちゃんわかる?」 いやと首を振った。 山、この地形は、相当せり出しているように見えるな?この村に何のメリットがあるのか? メリット…攻めるにしても、元の村までは距離がある、だったら資材置き場?一気に攻めるのなら、人をどこかに置かないと…。 私は、指でそれをたどります。 この山から、もしも……。 「チサ」 パパさんも気が付いたんでしょうか?私が地図から手を放すと似たような場所をたどり始めました。 「パパさん、やばいかも」 「何がやばいのだ、どういうことだ?」という爺ちゃんです。  私の頭の中には、日本史の戦い。たしか桶狭間、関ケ原の戦い、は違うよな。海外にもあったような、山から攻める戦術、ナポレオンだったっけ。 とにかく村を作った時点で、駐屯地にしたか。 そうなると、織田攻め? 物流と人の流れを止める、でもなー。 「雪が降ったら大変になるな」 ボブの一言でした。 「あー、やばい、やばいよ、お姫様、手紙を書いて、それも大急ぎで、ボブ兄さん紙!紙!」 内容は、北風に注意、ダメだ、もしも敵にみられたら。 「風?チサ、なにが起こる」 乾燥しているし、風も強い。爺ちゃん、もしも、この山から火でも投げ込まれたら。 「火攻め?」 「火攻めだと!」 地図から見て、ここに火が付けば一気に城壁を伝って火が燃え移る。とパパさんです。 「なぜですか?」 「城壁のそばは貧しいものが住んでいます、簡単な家ですからね、あっという間に火が付く」 でも住んでいるところまでは? そう思われますか?見てください、道はまっすぐ領主さまのほうへ、火がこの道を通ったら、ひとたまりもないでしょう。 「もしも、増員した兵士たちだけだとしても役には立ちません、彼らは右往左往するだけです」 「じゃあなぜそんな人たちを送ったのでしょう?」 「名目?」 「はー?ありえん!」 「ですが長老」 「だな、あの王だ、それも考えねば」 「王の兄、殺してまで何を狙う?」姫様は口に手をやり、驚いた表情です。 「ち、父が叔父様を?」 落ち着いて、王様だと決まっていないから。 「この国だと言いたいけど、入り混じった種族、そこまでしてほしいかな?」 爺ちゃん聞いてもいい? なんだ? 王都のバース領ここは王様の家族が持つことになってるよね。 今は誰? ガタンと椅子から立ち上がった姫様はガタガタ震えています。 どうかしたの? 「落ち着きなされ、王妃様の父上だ」 なぜ? 何故と言われてもな。 王様の家族じゃないの? 王女様はこう話された。
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