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王様に兄弟がいればいいのだが、数百年前から一人っ子が続いた。側室もいて兄弟はいたのだが、なぜか、残るように一人となるのが続いたために、王妃の父親がそのあとを継ぐのが続いているという。 じゃあ、お兄さんが王様になったら、あなたが領主に? そうだといいのですがと彼女は言った。 「女性がなったためしがありません」 「どうして?」 んーとうなる大人たち。 「男子一人残すということは、政治的に何かがあるということ、毒殺や、側室を亡き者にしてまで、都合のいいように操れるのは、小さな時だけだからね。歴史はくりかえしているのか、残念だな」 そういうとボブが噴出し、パパさんがア―アーといいながら拭いている。 その人は相当力がある?王様に、何も言わせないくらい。 ええと返事をした姫様。 爺ちゃんもうなずいた。 「爺ちゃん、やっぱり狙いは俺たちかも」 おれたち?って?どういうことだ?と口を拭きながら訪ねるボブ。 「いい?爺ちゃんは王様にしたら格上、いつ、何か言われたら、そりゃ怖い存在。王様を操りたい人がいるとしたなら目の上のたん瘤ってとこだ。そこに現れた変なチビ。俺は、この知恵のせいで狙われている、そしてあることを隠している、それはみんなが知ることだけど、隠しているからこそ、それを暴こうとする人、それを逆手にとって脅そうとする人も出てくるかもしれない。そうなると、この屋敷に住んでいるもの、働いている者たちすべてが危険をはらんでくる、だよね、爺ちゃん」 「…… うむ」 爺ちゃんも気が付いたようです。 でもこれはあくまでも私の推測、その流れはこうではないかと思います。 王妃がぞっこんの男がアルリア教からの刺客だとして、それを後押しする父親は、権力を手にして、王様を自分の意のままに操ろうとしている。 そうなると邪魔な存在は爺ちゃんだ。そこに現れた、訳のわからない子供が救世主といわれ始めてるわけだしね。 狙うのは私、そして爺ちゃんを黙らせる。次に王都にいるウィリアム様を黙らせ、領主たちのてっぺんに立ったバース領主。 「王を狙い、自分が王となる筋書きか?」 「多分」 それを聞いた姫様は真っ蒼になっていた。 持ってきた紙、姫様には、こう書いてもらいます。 叔父様お元気ですか? 寒くなってきました、北からの強い風には十分置きおつけください。山から吹き付ける南風はさらに注意なさってくださいね。 「これだけですか?」 「はい、これだけです」 いいのでしょうか? 早便で送ります、叔父様はきっと気が付くと思います。 彼女は震える手を抑えながら、何とか手紙を書き、赤い蠟を落とし、ご自分の指輪を押し当てました。 「ギルに頼みます」 よろしくお願いします。 「戻りますが、ナストールが狙うのは土地だけでしょうか?」 爺ちゃんは、あそこは何を考えているかわからないというのだ。 爺ちゃん、ダルア領主からは何か話は聞いてないの? 聞いていないという。隣の領主も爺ちゃんみたいに我慢強い? 爺ちゃんは少し笑いながらそうだなといっている。 やっぱりマタタビ集めておこうかな。 「先に、チサを狙い、バーシアを煽り、カス―チャだ、チサが狙われていると思われても無理はあるまい」 んー、でもな。 姫様、民が襲われたのは、王都のどのへんでしょうか? 王都?いいえ、確か、グレコ国中央の山、西側の山のすそ野のあたりだったと、お兄様が、自分が国を守ったのだと偉そうに話していましたから。 「国を守った?ん-?」 王都じゃない? 私は地図を指さします。 ん? 「じいちゃんこれ貸して」 机の上のものを置きました。 「見て、道ができる」 この国を手にして、グレコ国、すると、五大国の中央に道ができる。ナストール傘下に領地がはいる事でこの国は動き始めるとしたら?五大国が分かれる。左右に国が残り、狙うは先にオールト、そして最後ドニールじゃないかな? 「やはり五大国全滅か?」 「ナストールはわかっているのだろうか?」 「どういうことだ?」 「んー、これをして、ナストールは何を利益にするの?何がほしいのかな?」 「ふむ、ナストールは操られているとでも?」 「かもよ、後ろには、あの教会が付いているんでしょ?」 んーとみんなはうなってしまった。 姫様には、今日はここへお泊りいただいて、明日、帰ってもらう。誰かにつけられている可能性が高いからね。 その前に、私の意見も聞いてもらった。 「わたくしもまいります、おじさまの街の事でしたら任せてください」 まあいいか、その時になったら頼みますか。 深夜、カス―チャ領首都トーレ。 「お、誰からだ?」 アローか、姪からだよ。 オー姫さんか。無事についたからその手紙か? でもおかしいんだ。 おかしい? 手紙はたった三行。 早便。 持ってきたのは、ギルだという。 ギルだって? 「なんか言っていたか?」 「ああ、十分置きおつけくださいと言っていたな」 それだけ? ああそれだけだ。 見せろ。 「北からの強い風?南風?…山?北からなのに南風?……!」 おい、地図を用意しろ! 叔父さんは気が付いたみたいです。 そして三日後この辺りでもものすごい風が吹きました。乾いた風は、山を越えてきたというよりも北風が高い山にあたってそのまま戻ってきたみたい。 フェーン現象のようなものかな? 三日後の昼過ぎ、爺ちゃん当てに姫様からの手紙が届きました。 火攻めにならずに済んだこと。叔父が喜んでいたことに感謝があふれてくる。 だが、これですむのだろうか? 私はいてもたってもいられなくなり、あるところへ向かいました。 そのころ、ナストール国では。 ガチャンと、テーブルの上のものを薙ぎ払い、怒り心頭の王様です。 「誰がこの作戦を漏らした!うまくいくはずだったのに―!くそ―!調べろ、スパイが紛れ込んでいないかすぐに調べろ!しらみつぶしに調べ、引っ張って来い!」 「王様」 「うるさい、おぬしの話など聞くか、出て行け!」 「…… はっ」 ドアを閉めた。 ご自分のなさったこと、わかっておられないのか、この国も終わりだな。 カツーン、カツーン。 ん? 「これはこれは、ヒューゴ殿」 「司教様、これはこれはようこそおいでに」 「王はおられるか?」 「いらっしゃいますが、お声をおかけいたしましょうか?」 頼めるかな? 「はい、王様、司教様方がお越しです」 ドアが開きました。 「司教殿、聞いてくれ、お前はよい下がれ」 ドアのそばですべてを聞いておりました。 「ヤサグレ教団にのまれるか、嘆かわしや」 ナストールを止めはしたが、これから、もっと大きな問題に発展していくことになるんだ。
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