助っ人、三条愛美

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 消費者金融「新・土井ローン」の本社事務所は「新・土井エージェント」の事務所から三キロほど離れた場所にあった。市街地にある駅前の一等地で、周囲には銀行等の金融機関が集中していた。  先野と三条はそこへ来ていた。今回の依頼のあった担当者に聞き込みをするためであった。  三条がマネージャに担当者が誰かを尋ね、さらに金融部門に電話で確認した。そのうえで、先野をつれて直接話を聞きたいと申し出た。電話では適当なところで切られてしまうかもしれないし、先野と二人で対話することで有用な情報を得られることもあると踏んだのだ。  先野は自分が同行することにそれほど意味はないのではないかと渋ったが、三条が付き合えと譲らなかった。  ビルの一階にあるガラスの自動ドアから店舗に入ると、いらっしゃいませ、と声がかかる。暑い屋外から別世界のように冷房がよく効いていた。  ずらりと並ぶキャッシングマシンとその向こうに有人の窓口。三条はそこへつかつかと進み、 「エージェント社の探偵です。後藤さんに取り次ぎを願います」  淡桃色のベストの若い女性スタッフに、挨拶もなしに用件を告げた。  探偵、という言葉に、ちょうど相談に来ていた客がとなりの窓口から振り向く。 「あ、あの……」  戸惑う女性スタッフに、 「後藤さんは奥にいますでしょ? 案内してください」  ぐずぐずするな、と言わんばかりの眼光強く三条。やや上背の高いところから告げられ、反射的に、 「は……はい……こちらへ」  気圧されて、女性スタッフは窓口の横のドアを開け、どうぞ、と二人を案内する。 「後藤さん……あの……調査部門の探偵さんがいらしてますが……」  ドアの向こうに広がるオフィススペースで、女性スタッフは奥のデスクへと声をかける。こちらを向いた三十代ぐらいと思しきスーツ姿の男は何事かという顔をしている。  そこへ歩み寄り、 「エージェント社の三条です。今回、債務者捜索の依頼を出された金融部門の担当者に、手がかりを聞きにまいりました。担当の後藤さんですね?」 「きみたちは興信所の探偵なんでしょう? こちらからの情報でさがすのが仕事でしょうに」  金融部門の事業規模は、調査部門のそれよりもかなり大きい。売上げベースだと数十倍もの差がある。そんなところが、椅子に座ったままの後藤の態度に出ていた。 「あれっぽちでは時間を無駄にするだけです。借金をしたのですから、もっと個人情報をもっているはずではないのですか? 保証人や土地の登記書類の控えとか。それらを提示してください」  三条は斬り込む。堂々とした口調で、後ろに立っている先野は成り行きを見守るばかりである。
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