助っ人、三条愛美

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「それは……」 「そもそも二千万円もの貸付、どうして認めたんですか?」  三条はいきなり核心をついた。  後藤は苦虫を噛み潰したような顔で、 「会議室で話そう」  そう言うと気まずげに腰を上げた。  背中を向けて歩き出す後藤に続く三条と先野。壁際にいくつか設けられている会議室の一つに至り、ドアのパネルを「使用中」に裏返してから開けた。照明をつけ、 「どうぞ」  会議室には六脚の椅子がテーブルを囲んでいた。  三条は奥へと進み、椅子を引いた。先野もその隣に腰かける。  正面に後藤が座る。それからおもむろに口を開いた。 「例の件ですが……資料は本当にないんです」 「どういうことですか?」 「実に不可解なのですが、社内になんの記録もないんです。それでいて貸付だけはしていることになっている……。そして返済が始まっているにもかかわらず一度たりとも入金がない。もう半年もたっています」 「そんなばかな」 「我々もそう思います。だからこそ関連会社を使って調べるしかないんですよ。警察に被害届を出すわけにもいかない」 「待ってください、ではその債務者とは会ったこともないんですか?」 「そうです。それなのに、マイナンバーカードの写しや現住所とかの情報はある。我々としても不可解で……」 「なんでそんなことに……」 「わかりません……」  後藤はかぶりを振った。 「我々も困っているんです。額が大きい。利子だけでかなりの金額になる。どうあっても回収しなければならない。貸した人間はわかっているので、なんとかしたい」 「…………」 「一応わたくしが担当者ということになっていますが、債務者本人をまったく知らない。ということで、なんとかさがしだしてほしい、というわけなんです」 「信じられない……」 「我々も同じです」 「保証人も担保も、なにもない……それでよくそんな大金が動きましたね。チェック機能はどうなっているんですか?」 「それを言われると答えに窮するんですよね──」  その口調はどこか他人事だった。確かに言い分だけ聞けば、後藤になんの落ち度もないように聞こえる。まるで、知らないうちに犯人に仕立て上げられたかのよう。 「──単なるミスなんかでは起こりえないので社内調査もしました。ところがなにも出てこない……。証拠をお見せしてもよろしいですよ」 「……わかりました」  やや間をおいて、三条は言った。 「――その話は信じましょう。しかしそれでは債務者が見つからない可能性もある、ということを留意しておいてください」
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