ターゲットの足取り

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 そのなかに約野の顔をさがした。端っこから順にそれらしき人物がいないかと……。マイナンバーの証明写真と実物では同じようでいて印象が違うから、少しでも似ているところがあると目を止めてじっと観察した。  レースが終わって、場内アナウンスがレース結果を告げ払戻金額を知らせる。大きな電光表示板にも表示。すると、払戻金の受取や次のレースの車券を買いに席を立つ人々。 (さがしはじめたところなのに、これでは……)  先野は目を漂わせる。次のレースが始まるまで待たないといけないのか──。  が、──人の動きのあるスタンドに一人、熱狂とは程遠い、どこか諦観しているような目をした男が座席から動かないでいた。 (約野哲河……!)  スマホの写真と見比べる。野球帽をかぶっているし、本人かどうかは判別としない。近くで確かめようと思った。  階段を上がり、その男の座るところへと近づいていった。男との距離が縮まる。 (間違いない……)  そう思った。ここで会えるとはなんと運がいい。 「あの、……約野哲河さん……ですよね?」  近づいてきた先野に目もくれなかった男は、びくりと体を反応させたかと思うと、先野に向けたその目が驚きに見開かれた。瞳の奥に緑色の奇妙な光が見えた。
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