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約野は歯噛みした。タイムリープは連続では使えない。ここを脱するにはもう走って逃げるしかない。
とっさに回れ右して走り出そうとしたが、ネットカフェからあの男がのっそりと出てきて、
「まぁ、落ち着いてくださいよ」
(くそっ……どうなってるんだ! こうなったら、破れかぶれだ)
約野は走り出した。女の脇をすり抜けて、全力疾走。
「約野さん、待ってください!」
と叫ぶ女の声を無視した。逃げ切れるかどうかはわからないが、捕まるわけにはいかないという気持ちだけが足を動かした。
が、四十八歳という年齢は普段運動をしていない身には重かった。しかも大きなリュックを背負っている。
足がもつれてすっ転んだ。
手をつくのも間に合わず、顔面をアスファルトに打ち付けた。悶絶。
「ちょっと、だいじょうぶですか、約野さん!」
男女が駆け寄ってくる。
(くそっ……こんなところで……)
痛みに顔をしかめながら、約野は観念した。
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