占い師の罠

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占い師の罠

 翌日先野は、昨夜久しぶりにアパートに帰ってもらっていた約野を迎えに行った。いっしょに新・土井ローンへ行くためだった。今回のことをきちんと話し、借金をなんとか帳消しにできないかと交渉するのである。  サイバー犯罪の被害に遭ったに違いないと先野は考えていた。個人情報が盗まれ利用されたのだと、警察に被害届を出すことを提案するつもりだった。それで解決はしないかもしれないが、約野だけが悪者になるのは避けられるだろう。  タイムリープなどという約野の話よりは先野の推論のほうがまだ現実味があった、と三条は思う。では公営ギャンブルで勝っている理由はというと、たまたまだろうというのが先野の見立てだった。ついているときというのはあるもので、いつまでも勝てるわけでなく、そのうち負けが込んでくる、と言った。  ともあれ、依頼案件である捜索人――約野哲河は見つかった。あの手がかりで見つけられたのだから、仕事としてはそれで十分といえた。だからこれ以上世話を焼くのは本来ではないし、そんなことをしても売上にはつながらない。しかし、 「約野さんが気の毒すぎるだろ。力になれるんなら、出し惜しみせずに骨を折るのがおれのポリシーなんだ。謎を解いて犯人を特定するのが探偵の役目じゃない、困った人を救うのが探偵の職務だよ」  借金をチャラにする交渉といっても、金融部門とて、はいそうですかと、すぐに提案を飲んだりしないだろう。何日も、場合によっては何週間もかかるかもしれない。 「わたしもついて行きましょうか」  三条はタイムリープの話は先野にしなかった。というか、できなかった。そのことを知ったところで解決にはつながらない。金融部門にそんな話をしても冷笑されるのがオチだろう。だが先野一人で行かせるのも──と、金融部門に乗り込んで担当の後藤と話をした手前、少しは手伝おうと思う三条である。 「行くのはおれだけでいいだろう。元々はおれの案件だし、おれに任せろ。三条さんは他に依頼をかかえているだろ」  先野の言うとおりだった。だから任せることにした。約野が今後どういう人生を歩むのか、せっかくのタイムリープ能力を上手に使うことができるのか、そこはもう本人次第である。  それよりも、三条は担当している浮気調査をしなければならない。夫が仕事で出ている間、妻が浮気をしているのではないかという依頼であった。
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