手がかりの少ない捜索人

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 夕方になってきた。といっても梅雨を前にしたこの時期、日没は遅い。六時を迎えようというのに太陽はまだ赤くさえなっていない。  あちこち訪ね回って疲れた。休憩しよう、と思った。  先野は目についたコーヒーショップに入った。どこの町にもあるチェーン店のコーヒーショップだ。道路を走っていても遠くから目立つ看板は、うっかり通り過ぎてしまうことはない。  店横の駐輪場に原付バイクを駐めて店内に入ると、さほど混雑してはいなかった。レジに行って注文。支払いをしてコーヒーを受け取るついでに、帽子をかぶった若い店員にスマホの写真を見せてみた。 「この人、見たことないですか?」  たとえ見覚えがあったとしても名前までは知るまい。手がかりが得られるとは端から期待していなかったが、一応。 「あ……その人なら……」  ところが、店員は道路に面したガラス張りのカウンター席を指差した。 「あちらにおいでじゃないですか?」 「えっ?」  先野は振り返った。  そこに一人の男がいた。後ろ姿で顔はわからなかった。人違いである可能性を考え、ゆっくりと男の隣の席へと移動した。  トレーをカウンターに置き、ちらりと横顔を見た。 「あのぅ、失礼ですが──」  思い切って声をかけると、男が顔を向ける。 「約野哲河さんではないですか?」  男の目が見開いた。その瞳の奥で、緑色の奇妙な光が見えた。
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