3人が本棚に入れています
本棚に追加
1.彼女との出会い
私の心の中に、雨が降っている。ゴーゴーと音を立てて激しく打ち付ける雨に、私の心はかき乱される。
憎い……。
憎い……。
あの女が憎い。
彼女、斉木志穂とは、出会いからして最悪だった。
あれは私が中途採用で正社員として迎え入れられた職場での、初出勤の時の事だった。彼女は私の教育係として、昼食の時も同じテーブルに迎えられた。
「何? 何、私の顔見ているのよ」
きつめの美人……と言えば聞こえは良いが、彼女の顔は意地悪く歪んでいて、私はついじっと彼女の顔を見てしまっていた。
「す、すいません。あまりにも美人でつい……」
その場ははぐらかしたが、彼女は実際に、社会人としての人格が破綻していた。
質問をすれば、「あぁ!?」と不機嫌そうに返される。挨拶をしてもろくに返事は帰って来ない。彼女はいつもイライラしていて、取り付く島も無かった。
こちらがミスをすれば激しく罵倒され、お気に入りの社員以外への接し方はゴミ以下でしかなかった。
きっと、私は彼女に嫌われているのだろう。それも察していたから、極力彼女には近付きたくなかったが、不幸にも彼女は私の教育係で、彼女との関りはどうしても失くせなかった。
最初のコメントを投稿しよう!