勢いは大事

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「そう、じゃあ駅まで送るよ」 「いや、いいんだ。雅紀はシャワーもまだ浴びてないだろう? 黙って帰るわけにはいかないから起きてくれて助かった。ありがとう」 「ありがとうはこっちだよ! こんな高いものもらってしまって申し訳ない」 「泊まる場所の当てもなく突然来たんだ。泊めてくれて助かったよ、本当に。ホテル代として受け取ってくれ」  久世は、返そうとしても絶対に受け取らないぞという固い意志を浮かべた微笑でそういうと、荷物をまとめて生田のマンションを出ていった。  生田は玄関まで見送ったが、エントランスまでは見送ることができなかった。  友人が泊まってもそんなことはしないのだが、なぜか久世を見送るときにはそうしなければならないと思っていた。それなのに、生田は見送ることができなかった。
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