2ヶ月経たずして

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2ヶ月経たずして

 二度会っただけなのに、生田は久世のことがなぜか頭から離れなくなっていた。それは他人に対してめったに執着することのない生田にとっては非常に珍しいことだった。  最初に会った後はすぐに忘れてしまって、次に会うまでは思い出しもしなかったというのに、なぜ今回ばかりはと自分でも不思議だった。  引け目や劣等感などほとんど抱いたことのなかった生田は、朝まで飲むほど親しくなった久世に対して、その翌朝抱いてしまった感情をどう処理すればいいのかわからず戸惑った。  離れたところに住んでいるのだから、連絡を取ろうとしなければ会うことはないと考えても忘れることができなかった。否、すぐに会える状況であったならむしろ違っていただろう。さっさと会ってしまえば気が晴れる程度のものだったから、とそう考えた。  生田は思い切ってメールをしてみたが、返事は意外にもあっさりとしたものだった。あんなに盛り上がった相手とは思えないほど気のない様子が、生田を落ち着かない気持ちにさせた。  引きずることの嫌いな生田は、このもやもやとした感覚を早いところ晴らしてしまおうとして、その週末に東京へ出てみることにした。  土曜日の昼前に東京へと到着した生田は、早速久世に電話をかけた。 「あ、透? 今新宿にいるんだけど、今日って空いてる?」  久世が受話した途端に生田がそう言うと、無言の反応が返ってきた。
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