2ヶ月経たずして

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 24分後、西口のロータリーにクラウンが停車した。  後部座席のドアが開いて、生田は乗り込んだ。  久世は身体にピッタリと合ったブランド物の黒いスーツを見事に着こなしていて、男の目から見ても惚れ惚れするほどだった。  気圧された生田は、1週間ぶりに会った友の顔をまともに見れないでいた。 「何か予定あった?」  生田はサイドウィンドウの外を眺めている。 「暇していたところだ。雅紀が来てくれてちょうど良かった。嬉しいよ」  久世は穏やかな声で答えた。  生田は久世の方を見る。  久世は声と同様に穏やかな笑みを浮かべていた。  生田はその笑顔を見て調子が戻った。 「もしかしてデートだった?」 「いや別に」 「ごめん、彼女に謝っておいて。急に来て本当に悪かったよ」 「だから暇していただけだ。彼女なんていない」  会話に一瞬の間ができたとき、乗り込んだ時から響いていたスマホのバイブ音が目立って聞こえた。 「出れば?」  生田は久世の内ポケットにあるであろう、スマホを指さした。  久世は生田の指摘にため息をつくと、スマホを取り出して耳に当てる。 「はい。……いや、ごめん。……悪かった。……ああ。……次は必ず……本当だ。……女じゃない、本当だ。……明日? 明日もダメだ。……もういい、わかった。……わかったって。切るよ。……もう切るから」  久世は生田の表情を伺うようにチラッと見ると苦笑いをした。
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