2ヶ月経たずして

4/16
前へ
/138ページ
次へ
「ごめん」  生田が両手を合わせて謝ると、久世は生田を見て困ったような表情を浮かべた。  それから赤坂の料亭へ行って昼食をとり、午後はドライブをして、夜はこれまた久世の行きつけだという六本木のバーへ行って飲んだ。  前回会った時と同じように会話は途切れることなく盛り上がり、生田の抱えていた不安は吹き飛んだ。親交を深めつつある二人は、互いに踏み込んだ話までして、以前にも増して親しくなっていった。  相変わらずの酒豪の二人は一軒では物足りず、二軒目はどこがいいかという話になった。 「雅紀はその、クラブみたいなところがいいか?」  それまでのテンションが嘘のように久世がボソボソとした声で言った。 「え? なに?」  久世の変わりように耳がついていかない。 「その、女性がいる店がいいかと。多少は知っているから」  久世は生田の表情を伺いつつも目を逸らせたりと挙動不審な様子で言った。 「あぁ、クラブね、いや別に。透が行きたいならいいけど、僕は透といるなら女の子は要らないかな。こいつと飲んでても楽しくないってときは、そういうところへ行って誤魔化さなきゃならない時もあるけど、基本的にあまり興味はない。あ! まさかそういう意味だった?」  生田の焦った様子を見た久世は顔がほころんだ。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

443人が本棚に入れています
本棚に追加