2ヶ月経たずして

5/16
前へ
/138ページ
次へ
「いや。俺はそういうつもりで言ったわけじゃない。ただ確認しただけだ。そうか。それは光栄だな」  久世は嬉しそうにさらに笑みを大きくした。 「てか、透といたらモテないし嫌だよ。隣にいると引き立て役にしかならない」  久世は生田のその言葉で顔を赤らめる。 「それは雅紀の方が……え?」 「なに? その反応」  生田は狼狽えた久世を見て可笑しくなった。  その時、生田は急に周りの客の存在を意識した。それまでは久世との会話に夢中で周りを気にすることがなかった。意識をしてみると、自分たちをチラチラと見ている女性客が何組もいることに気がついた。  女性から期待するような目で見られ慣れている生田はその視線の意図に気がついたが、今はそんな気分ではない。  何人かの女性と目が合ったが、それを無視して久世に向き直った。 「泊めた代わりと言ってはなんだけど、透のところに泊めてもらえるかな? あ、でも服は買わないよ。あんなの買ってたら破産する」 「ああ。でも自宅はやめておこう。実家だから面倒だ。それでは、ホテルへ行ってルームサービスで飲み直そう」  生田はそれを聞いて口笛を吹いた。  絵麻も透も、金持ちは考えることが別次元だ。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

443人が本棚に入れています
本棚に追加