2ヶ月経たずして

9/16
前へ
/138ページ
次へ
 久世から差し出されたグラスを生田が受け取ると、久世も自分のグラスに注ぎ入れて、生田に向かってグラスを掲げて見せた。  その様子を見ていた生田が陽気に言った。 「ここで飲もう! 透も一緒に」 「えっ? お、男同士だぞ」 「温泉と同じだよ。夜景を見ながら温泉に浸かって酒を飲む、なんて贅沢な」 「おっさんだな」  久世は笑ったが、その笑みは幾分か強張っていた。  リビングへ引き返してシャンパンクーラーとワインボトルを持ってくると、久世もシャワーを浴びてバスタブに入った。 「それでは殿下、今夜はありがとうございます」  生田は久世にグラスを掲げて言った。 「構わん、好きにはからえ!」  久世も同じようにしてそれに応えた。 「あー、美味い! ここって、煙草吸っていいのかな?」 「大丈夫だ。確か灰皿があるはずだ」  久世はそう言うと、バスタブから出てアメニティのある棚を探し始める。  男同士とはいえ、否、男同士だからこそというべきか、生田は目のやり場に困った。  体脂肪率一桁台であろう、鍛え上げられ引き締まった久世の身体を見ると、自分と比較して落ち込んでしまう。中肉中背で多少の筋肉はついているが、鍛えていないことは明白な自分の体型が恥ずかしい。  鍛えている友人とスーパー銭湯へ行くことなんてしょっちゅうなのに、なぜか久世に対しては劣等感を抱いてしまう。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

444人が本棚に入れています
本棚に追加