2ヶ月経たずして

10/16
前へ
/138ページ
次へ
「あった。ほら。でも煙草なんて持ってきているのか?」  久世が灰皿を差し出した。 「ありがとう。あるよ。ここに」  生田はバスタブの近くに脱ぎ捨てていたズボンのポケットをまさぐり、煙草を取り出して火をつけた。 「透も吸う?」 「もらおうか」  久世は差し出された煙草を受け取って、借りたライターで火をつけた。  すると一口吸った直後に久世は咳き込んだ。  しばらく咳き込んだ後に、灰皿でもみ消すと言った。 「やはり無理だ」 「なんだよ、初めてだった? やめとけばいいのに」 「ああ」  久世は涙目でシャンパンを飲み干した。 「喫煙は筋トレに悪いからね。透のそれ、かなり真面目に鍛えているとみた」 「まあ、趣味だ」  久世ははにかんだ笑みを浮かべた。 「凄いよ。もっと増やすの?」 「今は維持だ。雅紀は? 興味あるのか?」 「あるよ。でも挫折した」 「俺は読書で雅紀は筋トレか」 「なに? 挫折した?」 「いやいや、面白いからちゃんと読んでいる。あ、では雅紀も次こそ挫折せずできるのでは?」 「うん、そうかも。やってみようかな」 「それなら、明日ジムへ行こう」 「わ! 出たよ。デートもジム行くタイプ?」 「そうではないが、ダメなのか?」 「いや、行こう、行こう! 僕とはデートじゃないしね」 「……ああ」  久世は目を逸らしてグラスに口をつけた。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

443人が本棚に入れています
本棚に追加