2ヶ月経たずして

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「いいなー」 「凄い」  生田は久世の返答も待たずに、久世の腕や背中の筋肉を触ってボソボソと呟いている。 「どれくらいかかる? ここまで鍛えるのに」  久世はお湯に浸かったせいなのか脂汗なのかわからない水滴にまみれて、身体を強張らせるだけで何も答えられない。 「僕もいけるかな」  生田は久世の身体を触りながら角度を変えて観察している。  耐えられなくなった久世は、はだけていたバスローブを羽織り直すと、シャンパングラスを手に持って無言のままリビングルームへと戻った。  グラスに残っていたシャンパンを一気に飲み干したあと、再び注いだ分も一気に飲んだ。  ソファに腰を下ろしてため息をつくと、今度はブランデーを別のグラスに注ぎ入れた。  そこへバスローブを着た生田が現れた。 「飲むねぇ。僕ももらおう」  生田はテーブルの上にあった空のグラスを手に持って、久世の隣に座った。  久世は生田の顔を見ないようにしてボトルをグラスに傾ける。  無言のままの久世を案じた生田は、グラスに口をつけてから聞いた。 「……怒った?」 「お、」久世は途中でゴホンと一度咳き込んだ。 「怒ってない」
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