2ヶ月経たずして

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 久世が目を覚ましたとき、目の前にある生田の顔を見て飛び起きた。  同じベッドで眠ってしまったらしい。  いきなり跳ね起きたせいで胃から込み上げてくるものを感じた久世は、トイレへと駆け込んだ。  すっきりすると、シャワーを浴びて身だしなみも整えた。  既にチェックアウト間近だったので、フロントに電話をしてもう一日宿泊することを伝えて、ついでにルームサービスを頼んだ。  ソファでスマホを見ながらコーヒーを飲んでいると、目の端に生田の姿が映りこむ。  チラチラと覗き見ては昨夜のことを思い返して、後悔したり焦ったり笑みを漏らしたりと、落ち着いた様子とは裏腹に心の中は大騒ぎであった。  生田が目覚めたときその目に映ったのは、落ち着いた表情の久世が優雅にコーヒーを飲んでいる姿だった。  高級ホテルのスイートであの姿は絵になる男だなと、生田は惚れ惚れした。 「おはよう。大丈夫?」  生田はトイレへ行ったあと、久世の対面に座ってカップにコーヒーを注いだ。 「おはよう」  久世は内心の動揺を一切表には出さず、落ち着いたまま澄ましている。 「何時? うわ、もう昼になるじゃん」 「4時くらいまで飲んでいたからな」 「透、大丈夫?」 「大丈夫だ」  久世は嘘をついた。 「強いね~」  そう言うと、生田はシャワーを浴びにバスルームへと消えた。
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