世間は狭い

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世間は狭い

 生田と久世はホテルのルームサービスで朝食兼昼食を済ませると、クラウンに乗り込んでジムへと向かった。 「やっぱりジムはやめておいた方がいい気がする」  二日酔いを抱えていた生田は不安に駆られた。 「確かに、アルコールが残っていると危ないからな。では今日はどうする? 新幹線は何時だ」 「遅くまであるけど、微妙な時間だな。もう帰ろうかな」  生田の言葉を聞いて、久世は黙り込んだ。 「いや、残高の問題で……新幹線じゃなくバスで帰ろうかと」  友の気落ちした様子を見た生田は、慌てて本音を漏らした。 「なんだ。それなら……」 「待って、金は出さないように。借りることもしない。返す当てがないからダメだ」  生田は久世の言葉に被せて言った。 「わかった。それならば、このまま送ろう。運転手に自宅の住所を言ってくれ」 「は?」 「とりあえず高速乗って」  久世が運転手に声を掛けると、かしこまりました、と運転手は言ってハンドルを切った。 「いや、ちょ、何時間かかると思ってるの」
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