世間は狭い

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「今から行けば5時間くらいだろう。帰りは新幹線で帰るから問題ない。途中で夕食をとることにしよう」  久世はキビキビと言った。 「それ、金出すのと同じじゃん」 「違う。俺が俺の分を払うだけだ。俺はまだ雅紀と話し足りない、それだけだ」  生田は呆れながらも嬉しそうな笑みを返した。 「高速乗る前にコンビニ寄らない?」 「最寄りのコンビニ」  久世がすぐに運転手に告げる。  かしこまりましたと言って、運転手は車をUターンした。 「通り道でいいのに」  生田は苦笑した。  コンビニの駐車場に到着すると、生田は早速煙草とコーヒーを買って灰皿の前で一服を始めた。  手持ち無沙汰でウロウロしていた久世は、コンビニの店内へ再び消えていった。 「雅紀!」  生田はその声に肩を一瞬震わせた。  久世はコンビニへ入ったばかりだし、ここは知り合いなどいない東京だ。同名で間違われたのかと思った生田は躊躇したが、その声の方へチラッと目を向けた。 「え、俊介!」  呼んだのは自分のことだったようだ。その姿を見て生田は思い出した。
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