世間は狭い

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 近所に住んでいた兄の同級生で幼馴染の桐谷(きりたに)俊介(しゅんすけ)だ。東京の大学を出てそのまま就職したと聞いていたのだが、まさかこんなところで偶然にも再会するとは。 「久しぶりだな! 雅紀もこっちにいたのか」 「いや、たまたま来ただけ。これから帰るところ」 「え? 地元に?」 「いや、大学を出てそのまま就職したから……」  生田がそう答えかけたとき、コンビニから出てきた久世の姿に気がついて視線を逸らした。  生田の視線に気がついた俊介が後ろを振り向くと、身体を丸めて伏し目がちに歩いてくる久世の姿を目に留めたようで、いきなり声を上げた。 「透! なんだなんだ、懐かしい知り合いに会う日だな今日は」  呼びかけられて久世は顔を上げた。その途端にくるりと身体を反転させてコンビニに戻りかけた。 「おいおい久世くん、どこに行くんだね。戻ってきたまえよ」  久世はその声で歩みを止め、再びこちらへ向き直った。 「嘘だろ、なんで俊介が」  ぶつぶつと言いながらしぶしぶと言った感じで歩いてきた。 「久世くんがまさか雅紀と知り合いだとは」
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