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「桐谷くん、君もかい? 世間は狭いようだね」
「いやー、雅紀とは何年ぶりかな。久しぶりに色々と話したいなあ」
「あれ? 桐谷くんは法務省にお勤めで毎晩午前様の忙しいお身体ではなかったのかな? そんな暇はないだろう?」
「いやいや、今日はたまたま一段落して空いているのだよ。君こそ論文があるのではないのかね?」
「今は余裕があるのだよ。それよりも桐谷くんはお金に厳しい人だから、外食はしないはずではなかったのかな?」
「いやいや、たまにはいいでしょう。昇給したのでね、それもありましてね」
生田は世間の狭さに驚きながらも、友人たちが自分の前では見せたことのない砕けたやり取りを見てさらに驚いた。
「雅紀はこれから帰るんだ。だから俊介と夕食を共にする時間はない」
「じゃなんでお前はいるんだよ」
「送るからだ」
「東京駅に?」
そこで生田は割って入った。
「わかった、三人で飲みに行こう。久しぶりに俊介に会えたんだから、明日は半休を取って午後からの出勤にするよ。外回りだからなんとでもなる」
それを聞いて久世と俊介は互いに目を合わせた。
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