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三人は横浜まで繰り出した。
「送ってくれるんだろうな……」
俊介が久世をジッと睨んだ。
「タクシー代は出す。美味い店があるんだ。雅紀を連れて行きたい」
久世は、俊介の視線から逃れるように運転席の方へ身を乗り出した。
「ありがとう。どこでもいいのに」
生田は久世の心遣いに顔がほころんだ。
高級そうな中華料理店へ着くと、いつの間にやら予約がされていたようで、すぐに個室へと案内された。
三人が座るが早いか、コースの前菜が運ばれてきて、グラスに酒も満たされた。
「こういうとこ、腹立たない? 粋な金持ち仕草」
俊介が久世を指差して生田に聞いた。
生田はそれに困ったような笑みで答えたが、内心はそんな久世に惚れ惚れしていた。
こういうことを何でもないことのようにサラリとやってのけてしまうところ、そして一切の嫌味がないところが純粋にかっこいい。
久世のこういう場面に出会う度に、自分が女性ならすぐに参ってしまうだろうな、と何度心に浮かべたかわからない。
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