世間は狭い

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 食事が進むに伴って再び友人たちの親しげなやり取りが展開された。それを生田は面白がりながらも、同時に複雑な想いを抱いていた。  久世と俊介が親しくしている様子を見ているとなぜか落ち着かない。他人が他人をどう思っているかなんて気にしたことはないし、自分も他人からどう思われているのかなんて考えようとしたことすらない。  それなのに、久世は俊介をどう思っているのか、二人の距離は自分との距離よりも近いのだろうか、久世は俊介といる方がリラックスできて楽しいのだろうか、と何度も同じことを考えてしまう。  久世とはたかだか数回会っただけの仲なのだ。自分の知らない面などたくさんあるだろう。親しく接しているように見えても、たまに距離を取られているように感じる時もある。  久世は自分のことをどう思っているのか、そればかりを考えてしまって、生田はこの友人たちとの食事に集中できないでいた。
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