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「あー、こいつ酒に弱いんだった。久しぶり過ぎて忘れてた」
久世が天を仰いだ。
横にはテーブルに突っ伏している俊介の姿がある。
「そう言えば俊介と飲んだの初めてだったかも。飲んでる最中はそんなに酔っているように見えなかったのに、いきなり寝るんだ」
生田は目を丸くして俊介を見ていた。
「どうしよう。こいつ一人でタクシーで帰れないだろ」
「送ってあげたほうが……」
「それでは雅紀はどうするんだ! 勝手につぶれたんだからここに置いていこう!」
久世は声を上げた。
「いやいや。そんなことできないよ。ここまで連れて来ちゃったんだから」
「……クソッ!」
久世が吐き捨てるように呟いた。
運転手も手伝って、三人でなんとか俊介を車に乗せた。
「えーっと、どこに住んでるんだこいつは?」
久世がつぶやくと、すぐさま運転手が答える。
「把握しております」
「では、急いで」
久世はそう言い捨てて、ジロリと俊介を睨みつけた。
その様子を見ていた生田は吹き出した。
「何度かあったの?」
「あー、片手じゃ足りない」
久世が目頭を揉みながら答えた。
「仲いいね」
久世はその言葉を聞いて生田の方を向く。
「仲良くはない」
「うん、それが仲いいってことだよ」
生田は微笑を浮かべていた。
久世は口を開きかけたが、何も言わなかった。
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